井澤ですいざわ

今年の学科本試験の解答速報をしていて、非常に印象に残った1問があります。

1級建築士、2級建築士を合わせた全科目の中で、私が今年最も良問だと思った問題です。

独断と偏見で選んだ「Best question of the year」は、2級建築士 学科Ⅲ構造No.22枝4です。

1級を目指している方にも十分ためになる問題ですから考えてみてください。

 

問題 『アルカリ骨材反応は、骨材中の成分がセメントペースト中に含まれる塩化物イオンと反応し、骨材が膨張する現象である。』

 

これは正しい記述ですか? 誤った記述ですか?

答えは「誤」です。 できましたか?

 

記述中の「塩化物イオン」の部分が「アルカリ金属イオン」の間違いです。

つまり、アルカリ骨材反応は、骨材中のシリカ成分(二酸化ケイ素)がセメントペースト中に含まれるアルカリ金属イオンと反応して、シリカゲルとなり、それが吸水膨張してコンクリートに亀甲状のひび割れやポップアウト(膨張圧によってコンクリート表面が剥離すること)を生じる現象です。

乾燥剤で有名なあのシリカゲルです!

 

一方、塩化物イオンCl-は、海砂を骨材として用いる場合等に注意が必要なわけですが、鉄筋表面の不動態皮膜を破壊し、鉄筋を腐食(さび)させます。したがって、コンクリートに含まれる塩化物イオン量は0.30kg/m3以下としなければなりません。

 

この2つ、つまりアルカリ骨材反応対策と塩化物イオン量の規制は、鉄筋コンクリートの耐久性を確保するために材料面で特に注意が必要なことなのですが、混同されることが多く、それを認識させるという点でこの問題は良問だと思います。

 

■アルカリ?

また、鉄筋の腐食(さび)を防ぐという点ではアルカリ性を保ち、中性化を防ぐことが重要ですが、「アルカリ」と言う場合には、この「アルカリ性」を指す場合と「アルカリ金属」を指す場合の2つがあることにも注意が必要です。

アルカリ性は、言うまでもなく酸性の反対で、水酸化物イオンOH-が多い状態を言います。また、アルカリ金属とは元素周期表(なつかしい!)の一番左にある金属をいい、Li(リチウム)Na(ナトリウム)K(カリウム)などがあります。

「アルカリ骨材反応」の「アルカリ」は「アルカリ金属」のことであって、「アルカリ性」のことではありませんよ!

 

紛らわしいことがいっぱいで、なかなか考えさせる問題です。

では、次回は「Worst question of the year」を・・・。