TAC講師の神部です。かんべ

TAC受講生、全受験者のみなさん大変お疲れ様でした。

 今年度試験の内容は、多くの実例建物に基づいた“景勝地に建つ大学のセミナーハウス”でしたので、講習で学習してきたとおり、基本に忠実な想定内のものであったと思います。しかし、想定内とはいえ、前面道路と最良の景観側(湖)が同じ南側という条件から、1階のアプローチ計画と景観に配慮した配置計画をどううまく両立させるか、また、建ぺい率の上限が60%という条件から、各所要室をいかにコンパクトに配置するかが最も苦労されたところではなかったでしょうか。また、アトリエ及びアトリエ準備室以外の床面積はすべて適宜指定であったことから、諸室の適切な規模想定が求められ、それらが今課題の特徴であったといえます。

では、試験の主な採点のポイントを探ってみましょう。

①建ぺい率の上限が60%
 敷地面積が1750㎡に対して、建築面積の最大限度は1,050㎡となり、標準的な経済グリッドでいえば、7m×6mグリッドで約24コマ分、7m×7mグリッドで約20コマ分が限度ということになります。バルコニーや軒の出が1mを超える場合は、その部分も算入されます。
 これに違反すると失格又は採点上大きなマイナスとなります。

②アプローチ計画と屋外テラスの計画
 “利用者及び車いす使用者用駐車スペース”と“職員及びサービス用駐車スペース”のアプローチは分離できましたか。
 屋外テラス及び食堂は、「一体的に利用する」条件でしたから、図のように明るく開放的に南側景観配置とするのが原則です。

1級設計本試験配置計画-枠付


③ゾーニング・動線計画
●「研修部門及び共用部門の食堂は、地域住民との交流の場・・・」という条件ですので、順当に考えれば、研修部門及び共用・管理部門を1階、宿泊部門(浴室を含む)を2階に計画するのが最も基本的なゾーニングとなります。ただし、共用部門の食堂及び屋外テラスは、1階及び地上に計画するのが妥当ですが、「屋外テラスは、地上又は1階の屋上・・」とありますので、1階屋上に屋外テラス、食堂を2階に計画することも可能であったと思われます。ただし、その場合、食堂は地域住民も使用できる条件でしたからEV及び階段に近い位置に設ける動線計画が求められ、宿泊部門とのゾーニングが難しくなると思われます。
●管理事務室は、管理部門内に計画することよりも、エントランスに隣接させ、地域住民が利用する研修部門全体及び食堂が見通せる計画が優先されます。
●1階の動線計画は、出来るだけ学外者がわかりやすい動線で誘導できる計画とするのが基本です。

④景観を眺望として取り入れた計画
 「眺望に配慮する」という条件は、浴室だけでしたが、立地条件から考えれば、景観配置の優先順位〔食堂浴室(眺望指定)談話室宿泊室〕を考えた室配置が適切と考えられます。また、浴室は、「眺望に配慮する」という条件から、出来れば湖側(道路側)がベストですが、それに準じる北、東側の樹林側配置とすることもできたと思われます。

⑤要求室の規模等
(1)エントランスホールに吹抜けとラウンジ゙、作品展示スペースの計画
 エントランスホールは、まとまった交流スペースとして約150㎡程度あればよいでしょう。「明るく開放的に・・・」という条件でしたから、50㎡程度の広めの吹抜けを設け、上部にトップライトを設けるなどの計画が適切です。
(2)アトリエの面積及び天井高さ
約150㎡(135㎡~165㎡)で、心々で10m以上の無柱空間で要求されました。天井高さ5m以上は、通常、吹抜け状空間として確保するのが適切です。
(3)床面積が適宜の要求室は、次の標準面積で計画できましたか。
 ただし、下記の床面積に固執するよりも平面計画全体のバランスと間仕切壁が柱割りと一致した整然とした計画の方が優先すると考える方が適切です。
●セミナー室: 2~2.5㎡/人を目安
 セミナー室A(50人):約100㎡
 セミナー室B(15人):30㎡~40㎡
 セミナー室C(8人室に2分割):30㎡~40㎡を2分割
●宿泊室
 ・洋室(4人部屋):洗面台と便所+PS及び談話コーナーを含め、30㎡~40㎡/室
 ・和室(12畳):洗面台と便所+PS、押入れ付きで、30㎡~40㎡/室
 ・洋室(個室):バス、洗面台、便所+PSで、約20㎡/室
●浴室(各室5人):男女別に、脱衣室を含め、20㎡~30㎡
●談話スペース(10人):約30㎡
●管理事務室(2人):6~8㎡/人を目安⇒約15㎡
●食堂(30人):1.5~2㎡/人、厨房は食堂の1/2程度

⑥景観保全の勾配屋根に関する設計上のポイント
(1)勾配屋根の構造計画
 勾配屋根をRCスラブで剛床として設計した場合、スラスト(柱に作用する水平力)に配慮して、2階柱の断面を1階柱同寸とすること、大スパン梁や小梁を、勾配と直行するけた行方向に水平に設けることなどがポイントとなります。
(2)各階における設備スペースの計画
 勾配屋根のため、屋上に設備スペースを設けることが難しいことから、1階の設備機械室、又は地上、もしくは1階屋上に適切な広さの設備スペースを設けなければなりません。
(3)屋根勾配を活かした空間計画
 勾配屋根を利用した、天井高さの計画や天窓(トップライト)や頂側窓などによる自然採光を取り入れた計画が必要となります。

⑦設備計画に関する設計上のポイント
●学生用宿泊室に、便所、洗面台を設け、適宜1、2階にP.Sの計画が必要でした。
●浴室用の給湯・ろ過設備の設置位置について記述が求められました。給湯器をバルコニーに設置し、ろ過設備は、2m×3m程度の設備スペースに設ける計画とするか、又は、浴室に近い位置に設備室があれば給湯器、ろ過設備とも設備室に計画するが順当であったと考えます。

以上、平成25年度 1級建築士設計製図試験の大まかな総評でした


10月16日1級建築士設計製図試験の総評とオリジナル答案例をTACホームページにて公表します。
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また、近日中に「一級設計製図本試験採点のポイント」動画もアップします。
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