井澤です
今回は皆さんが特に苦手な構造特性係数Dsです。
苦手な人は、分かるまでじっくり3度読んでみてください。
■問題1
構造特性係数Dsは、架構が靱性に富むほど大きくなる。(一級構造:平成24年No.26)
■問題2
必要保有水平耐力Qunは、各階の変形能力を大きくすると小さくなる。(一級構造:平成26年No.24改)
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■解答
■問題1 誤。靱性が高いほど、構造特性係数Dsは小さくなる。
■問題2 正。変形能力が大きい(=靱性が高い)ほど、構造特性係数Dsは小さくなり、必要保有水平耐力は小さくなる。
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まずは、問題1、2の中に出てくる用語「靱性」「変形能力」について確認しておきましょう。これもとっても大事な内容です。
―――――――――ポイント―――――――――
「靱性が高い」=「粘り強い」=「塑性変形能力が高い」=「変形能力が高い」
すべて、同じ意味です。
すべて、降伏後に抵抗力が急激に低減することなく、塑性域でも変形し続ける能力が高い、という意味です。
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さて、本題の必要保有水平耐力Qunと構造特性係数Dsの話をしましょう。
前回説明したとおり、
「必要保有水平耐力」は、文字通り「保有水平耐力」として最低「必要」な値です。
具体的な算出方法は次のとおりです。
(必要保有水平耐力Qun)=(構造特性係数Ds)×(形状係数Fes)×(C0=1.0の大地震時の地震層せん断力Qud)
では、「必要保有水平耐力」は何を意味しているのか?
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必要保有水平耐力とは、ズバリ、「標準せん断力係数C0=1.0の大地震のエネルギーを吸収するのに必要な力」です。
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「保有水平耐力」が「必要保有水平耐力」以上であれば、C0=1.0の大地震のエネルギーを吸収できるので倒壊しないというわけです。
■「C0=1.0の大地震時の地震層せん断力Qud」との違いは?
① 必要保有水平耐力Qunは「大地震のエネルギーを吸収するのに必要な力」
② Qudは「大地震時の地震層せん断力」
これは違うのか? 違うのです!
まず初めに、「保有水平耐力」が「② 大地震時の地震層せん断力Qud」以上であれば、大地震でも倒壊しません。
これが前回説明したとおり、必要保有水平耐力のベースが「② 大地震時の地震層せん断力Qud」である理由です。これは「力」だけで耐えている状態です。
一方、②ほどの「力」は無くても、「靱性=変形能力」が高ければ、大地震のエネルギーを吸収でき、倒壊を防ぐことができます。
つまり、大地震のエネルギーを吸収するには、「力」で耐えるだけでなく「靱性=変形能力」で吸収することもできるのです。
なぜなら、「力」×「変形」=仕事=エネルギーだからです。
したがって、
「靱性=変形能力」が高ければ、「② 大地震時の地震層せん断力Qud」より小さな力でも、大地震のエネルギーを吸収できるのです。
その力が「① 大地震のエネルギーを吸収するのに必要な力」すなわち「必要保有水平耐力Qun」です。
そして、ベースである「② 大地震時の地震層せん断力Qud」からどれだけ小さくできるかを表すのが「構造特性係数Ds」です。
―――――――――ポイント―――――――――
靱性が高いと、
構造特性係数Dsは小さくなる。
必要保有水平耐力も小さくなる。
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