No.374からかなり間が空いてしまいましたので、No.372からNo.374で学習した、SRC造の累加強度式のポイントを再確認しましょう。
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① 「曲げモーメント・軸力」については、許容耐力であれ、終局耐力であれ、
累加強度式で算定できる。
累加強度式で算定できる。
② 「終局耐力」については、曲げモーメントであれ、軸力であれ、せん断力であれ、
累加強度式で算定できる。
累加強度式で算定できる。
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今回はこれ以外のところ、つまり「せん断力」の「許容耐力」の部分、一言で言えば「許容せん断力」を扱います。
■問題1
鉄骨鉄筋コンクリート構造の柱の短期荷重時のせん断力に対する検討に当たっては、鉄骨部分の許容せん断耐力と鉄筋コンクリート部分の許容せん断耐力との和が、設計用せん断力を下回らないものとする。(一級構造:平成27年No.23)
■問題2
鉄骨鉄筋コンクリート構造の柱の長期許容せん断力は、鉄骨部分の長期許容せん断力を無視し、鉄筋コンクリート部分のみの長期許容せん断力とした。(一級構造:平成14年No.13)
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■解答
問題1 誤。許容せん断力については、累加強度式で算定できない。柱の短期許容せん断力は、SとRCそれぞれについて「生じている力≦許容耐力」を確かめる。
問題2 正。接合部と柱の長期許容せん断力は、ひび割れを許さず、鉄筋コンクリート部分のみの長期許容せん断力とする。
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はじめに今回のテーマである「許容せん断力」について、次表中の位置をしっかり確認してください。

表から分かるとおり、応力の3種類である「曲げモーメント・軸力・せん断力」のうち、「せん断力」だけは、部位(接合部か・柱か・梁か)によって、また、許容耐力が長期か短期か(長期許容せん断力か・短期許容せん断力か)によって、計算方法が複雑に変わります。
まずは、この「許容せん断力」について、次のように理解してください。
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「許容せん断力については、累加強度式で算定できない。」
(とりあえず接合部の短期の部分だけは無視してください。)
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「累加強度式で算定できない」ということは、Sの耐力とRCの耐力を合計できないということです。ではどうしたら良いか?基本的な考え方は次のとおりです。
・SはSだけで生じている力を求め、Sの許容耐力以下であることを確かめる。
・RCはRCだけで生じている力を求め、RCの許容耐力以下であることを確かめる。
これが表中で「SとRCそれぞれで耐える」と書いた考え方です。
表にあるとおり、柱の短期許容せん断力と、梁の長期・短期許容せん断力がこれに該当します。
■なぜ許容せん断力については、累加強度式で算定できないのか?
なぜ許容せん断力については、累加強度式で算定できないかというと、「曲げ降伏先行」の考え方を前提としているからです。曲げ降伏を先行させる理由は、曲げは靱性破壊、せん断は脆性破壊だからですね。
そして、「曲げ降伏先行」の場合、曲げ降伏によって曲げ変形が大きくなると、SとRCがズレて、SとRCの付着がなくなるからです。SはSだけで耐え、RCはRCだけで耐えなければならなくなり、SとRCで協力して分担するという累加強度式の考え方ができなくなります。
■接合部と柱の長期許容せん断力は「ひび割れを生じない」
表にあるとおり、接合部と柱の長期許容せん断力がこれに該当します。
「ひび割れを生じない」という条件は厳しい条件です。
なぜならSを無視し、RCの鉄筋も無視して、コンクリートが耐えられるという条件だからです。
この厳しい条件に適合させなければならないのは、もちろん特に大事な部位です。
接合部、柱、梁の3つの中で、より大事な部位を2つを選べと言われれば、接合部と柱になりますよね。接合部と柱の崩壊は、建築物の崩壊に直結しますからね。柱の全塑性モーメントを梁の全塑性モーメントよりも大きくするのも同じ理由です。
■許容せん断力の中で、接合部の短期許容せん断力だけは、累加強度式で算定できる。
この理由は、柱梁接合部の部分は、柱または梁に比べてしっかりと拘束されているので、SとRCがズレにくいからです。
以上、累加強度式について、No.372から4回にわたり説明してきました。
ポイントを整理しますので、前述の表と一緒に理解してください。
――――ポイント:SRC造の累加強度式――――
① 「曲げモーメント・軸力」は累加強度式で算定できる。
② 「終局耐力」は累加強度式で算定できる。
③ 「許容せん断力」は、原則として累加強度式で算定できない。
③をより細かく見ると、
1.柱の短期許容せん断力と、梁の長期・短期許容せん断力は、
SとRCそれぞれで耐える。
SとRCそれぞれで耐える。
2.接合部と柱の長期許容せん断力は、ひび割れを許さず、
コンクリート部分のみの長期許容せん断力とする。
コンクリート部分のみの長期許容せん断力とする。
3.許容せん断力の中で、接合部の短期許容せん断力だけは、
累加強度式で算定できる。
累加強度式で算定できる。
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コメント
コメント一覧 (4)
ご推察のとおりです。
確かに紛らわしいですので、
「鉄筋コンクリート部分のみの長期許容せん断力とする。」
を「コンクリート部分のみの長期許容せん断力とする。」
に修正しました。
ご指摘ありがとうございました。