井澤ですいざわ
今回の内容は、多くの受験生が間違えてしまう内容です。
基礎構造のなかで最も大事なポイントの一つです。

■問題1
同一工法の杭基礎を用いる建築物において、杭の径のみが異なる場合、地震時の水平力に対し、杭頭固定曲げモーメントは、が小さい杭ほど大きくなる。
(一級構造:平成21No.22
■問題2
一様地盤中にある杭及び地盤を弾性と仮定した杭頭固定の杭において、地盤、杭工法及び杭頭に作用する水平力が同じ場合、杭径が小さいほど、杭に発生する曲げモーメントは大きくなる。
(一級構造:平成23No.22
■問題3
支持層が傾斜した地盤においては、杭径が同じであっても、各杭が負担する水平力は杭長に応じて異なる値として設計する。
(一級構造:平成26No.23
■問題4
支持層が傾斜した地盤においては、杭径が同じであっても、各杭が負担する水平力は杭長が長いほど小さくなる。
(オリジナル)

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■解答
問題1、2 誤。問題1も2も内容は同じ。杭径が小さいほど、剛性が小さくなり、負担する水平力は小さくなる。したがって、曲げモーメントは小さくなる。
問題3、4 正。杭が長いほど、剛性が小さくなり(=柔らかくなり=変形しやすくなり)、負担する水平力は小さくなる。
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前回は、水平地盤反力係数と杭頭モーメント・水平変位について学びました。
今回の杭径、杭の剛性と合わせて、ポイントをまとめると次のようになります。

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このポイントの中の、杭径と杭の剛性について、気を付けなければならない注意点があります。
それは、杭径と杭の剛性については、「杭頭モーメント」を考える際の前提条件と、「杭頭の水平変位」を考える際の前提条件が違うのです。

■杭径・剛性と杭頭の水平変位
わかりやすいのは「杭頭の水平変位」のほうです。
杭径が大きくなれば、杭頭の水平変位は小さくなります。
杭の剛性が大きくなれば(=硬くなれば)、杭頭の水平変位は小さくなります。
これはわかりやすいですよね。
一つの建築物の杭全部について、杭径が大きくなれば、また、剛性が大きくなれば、杭頭の水平変位は小さくなります。

■杭径・剛性と杭頭モーメント
問題1~4はすべて、この「杭径・剛性と杭頭モーメント」についての問題です。
上図の中で赤の四角で囲んだ部分です。
この時の前提条件は、杭頭の水平変位の時とは異なり、一つの建築物の杭の中に、太い杭と細い杭がある、剛性の大きな杭と小さな杭がある、長い杭と短い杭がある、という前提条件なのです。
一つの建築物の杭ですから、水平変位はどれも同じという前提条件です。
上図は柱と梁の絵ですが、柱を杭、梁を基礎梁と考えてみてください。
基礎梁が剛体ならば、左の杭の水平変位と右の杭の水平変位は同じです。
このとき、太い左の杭は、大きな水平力を分担します。細い右の杭は、小さな水平力で同じだけの水平変位が生じます。
したがって、太い左の杭のほうが、杭頭モーメントも大きくなるのです。


あえて「
こう考えると間違える!」という考え方を説明してみます。
杭径が大きいと(=杭の剛性が大きいと)、硬くなり、変形が小さくなるので杭頭モーメントは小さくなる、と考えると間違えます。
杭全部が太くなるのではなく、太い杭と細い杭が混在していて、一つの建築物の杭なので、太くても細くても、どちらも変形は同じなのです。このとき、太い杭のほうが大きな力を負担するのです。したがって、水平力も杭頭モーメントも大きくなるのです。