井澤ですいざわ

昨日一級建築士学科試験を受験された皆様、合計6時間30分という非常に長時間の試験、本当にお疲れ様でした。

(1)TAC合格推定点
さっそくですが、TACの合格推定点は、次のとおりです。
後述の講評のように全体の難易度が低く、総得点が大幅に繰り上げられる可能性が高いと考えます。
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■科目基準点
 計画11点、環境・設備11点、法規16点、構造16点、施工13点
■総得点
 96点
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・自己採点等による誤差を考慮し、95点以上の方は速やかに設計製図の受験対策を進めるべきと考えます。
・TAC設計製図本科生における学科合格発表後の特別返金制度については、こちらをご覧ください。

(2)総評
続いて、総評です。

難易度は、次のとおりです。
・計画    → 易しい
・環境・設備 → 易しい
・法規    → 易しい
・構造    → 例年並み
・施工    → 難しい
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・全体    → 易しい

過去問を正確に理解していれば高得点が取れる出題でした。
しかし、特に構造、施工では、あいまいな理解だと新規問題に惑わされて間違えてしまうという問題が数多く見受けられました。

(1)計画
・実例・建築史が6問出題されましたが、過去問で5問は得点できる内容でした。それが今年の易しさの最大の原因であったと言えます。
・No.17(美術館の実例)は、発表されたばかりの設計製図課題「美術館の分館」に関連する出題でした。肢4はアスペン美術館ではなく、フランク・ロイド・ライトのグッゲンハイム美術館の特徴です。実例の解答肢(誤り)のパターンの一つである「他の建築物の説明」になっているのではないか、という「カン」が働くと気付けたかもしれません。
・TAC生は「階段室内の一時待避スペース(No.9)」、「ECI方式(No.20)」、「コミッショニング(No.20)」などの新規問題を見て「出た!」と思えたのではないでしょうか。

(2)環境
・計算問題が3問出題されたことがまず一つ目の特徴です。内容的には過去問で十分に解答できるものです。
・カラレーション(No.9)、ウォーミングアップ制御(No.12)、微気候(No.20)、バスタブ曲線(No.20)など新規問題も散見されましたが、いずれも過去問で解答肢が見つけられる問題でした。

(3)法規
・暗記している内容で「誤り」を確信できるような問題が多く、多くの方が制限時間内に解答でき、易しく感じたのではないかと思います。
・設問の文字数も少なく、5行に渡るものが1肢だけ、というのは近年では珍しいことです。
・例年だと防火避難規定の問題の前文に付いていた「耐火性能検証法、防火区画検証法・・・は考慮しないものとする。」という一文が問題集の表紙に移っていたことには気付いたでしょうか? これも設問の文字数が少なく感じた理由の一つだと思います。
法改正内容では、№14肢1の立体道路制度、№14肢2の接道義務の緩和、№15肢2の田園住居地域、№19肢2の老人ホーム等の共用廊下・階段の容積率緩和をはじめ、前年、前々年の法改正内容からの出題も多く、法改正内容がすぐに出題されるという建築士試験の特徴が顕著に見られます。
・No.13の木造の軸組の最小限の長さの計算問題では、「地盤が著しく軟弱な区域として特定行政庁が指定する区域内」では、地震力による必要壁量が1.5倍になるという論点がはじめて出題されました。なお、壁倍率は不明ですが、「軸組の最小限の長さ」ということは、壁倍率を1とした場合の軸組長さを求めることになります。

(4)構造
・力学の計算問題は5問で、過去問中心の標準的な問題でした。
・文章問題では、新規問題も散見されるものの、解答肢は過去問で見つけられるという問題が多いと言えます。とは言っても、それは易しい過去問ではなく、過去問の中でも「正確に覚えるのが難しい過去問」、「合格者と不合格者の差が付く問題」が狙われています。横補剛の数(№15)、限界細長比(№16)、内部摩擦角(№19)、水平地盤反力係数(№21)、鋼材の板厚と基準強度(№29)など枚挙にいとまがありません。それを正確に覚えた人が得点を重ねています。
・免震構造から1問、制振構造から1問、難しい問題が出題されました。

(5)施工
・施工は近年得点しにくい科目の筆頭になっています。
・新規問題や、過去問の内容であっても表現を変えた出題が増えています。暗記系科目は、過去問をそのまま出題すると実力の差が出ないためと考えられます。
・№11(フレッシュコンクリートの受入れ検査)では、写真を使った問題が出題されました。出題の内容は過去問そのものです。ここに、過去問を少しでも変えて出題しようという近年の傾向が顕著に見られます。空気量の数値などは許容差も含めて「空気読めずに仕事(4.5%)もいっこう(±1.5%)はかどらず」などの語呂合わせを駆使して覚えて欲しいところです。
・難易度が高くなった最も大きな理由は、ほとんどの問題に新規問題が1つは入っているという点です。例えば№14(鉄骨工事)は、肢2の組立溶接の長さが40㎜以上であること、また、№15(木工事)は、肢3の壁倍率2.0は2つ割材(2・2つながり)であることを過去問で正確に覚えていないと、残りの選択肢に新規問題が2問も入っていますので手も足も出ないという具合です。
・「正確に覚えるのが難しい過去問」を徹底理解することの重要性がよく分かる出題でした。

一級建築士学科試験の総評は以上です。

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合格見込みの方、次は設計製図試験です!

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つかの間の休息をとった後、いよいよ設計製図試験に向けて頑張りましょう!