令和元年の二級建築士設計製図試験の課題は、驚くほどのサプライズの要求条件はありませんでしたが、「既存樹木」が建物の配置に大きな影響を及ぼし、多くの受験生がプランに苦戦した模様です。
また外構についても、既存樹木、屋外テラス、駐車スペース2台、駐輪4台、屋外スロープなど要求のものを置くと、ほとんど余りのスペースがない状態で、屋外スペースの制約も厳しく、プランニング力が問われた試験であったと言えるでしょう。
以下に今年の設計製図試験のポイントを示します。
●既存樹木について
今年の課題のキモとなった「既存樹木」。既存樹木の条件は過去にもよく出題されていますが、建築物の配置にここまで影響のある既存樹木は初めてでした
「既存樹木を活かした外構計画」といった条件や、敷地に余裕がなかったことから屋外テラスを既存樹木の部分に計画したほうがまとめ易かったと考えられます。
この部分に建築物や駐車、駐輪スペースを計画した場合は、失格または大きな減点となる可能性があります
当然、建築物の外壁だけでなく、庇なども樹木にかかってはいけません
【↑TAC課題2の既存樹木】
●バルコニーの出題
意外なことですが、試験として「バルコニー」は今回初めての出題でした。奥行き910㎜、幅1,820㎜以上、かつバルコニーは床面積には含めないという条件でした。
→奥行き910㎜であれば建築面積にも算入されません
→2階平面図にバルコニーを記入したら、立面図など他の図面と整合をとる必要があります
→床梁を910㎜延ばして片持ちの形でバルコニーを作る場合は、伏図についても記入が必要です。ただ、アルミ製の外付けバルコニーもあるので、文言でその旨を明記しておけば、伏図にバルコニーの記入がなくても良いのではないかと考えます。
【↑TAC課題6のバルコニー】
●外壁の仕上げを乾式工法とする条件、踏面の寸法指定
この2つの条件は、平成29年(2年前の木造課題)で出題された条件と全く同じ設定条件の出題でした。これらは今後もスタンダードな条件として出題される可能性があるでしょう。
●部分詳細図
2階屋根部分の部分詳細図は、今回初めての出題でした。ただ、課題の中でも学習していましたので想定内の出題であったと思います。
気になる所は、軒桁や小屋梁の部材寸法についてです。これらは、他の図面と整合を見ることができない事から、部材寸法についての採点はされず(採点できず?)、小屋組みの部材構成が描けているか、要求に対する部材や金物が描けているか、材料名が描けているか、などが採点ポイントでしょう。
【↑TACテキストより(窯業系サイディングの小屋組部分詳細図)】
●事務所の床レベル
応接室と多機能便所は、車椅子使用の来客を考慮するということなので段差はあったとしても乗り越えられる20㎜以下としなければなりません。他の事務室などについては、車椅子使用を考慮する必要はありません。
【総評】
この試験は相対試験です。プランは難しかったものの、時間内に多くの受験生が完成させていたようですので、大きな条件違反がなく、要求事項の記入漏れの少ない、表現の良い図面を描けたかどうか?で合否が決まってくるのではないでしょうか
後は結果を待ちましょう。
皆さまの合格を祈っています
※ブログにコメント頂いた皆様
個別の対応については際限がなくなるため、申し訳ございません
コメント
コメント一覧 (6)
下足入れががあるため、上足と考えると違和感ある課題でした。どこの資格学校も、オリジナルプランは苦しそうでしたね。
質疑なのですが、北側の隣地境界線から北側柱芯間530で設計してしまい、離隔が440しか取れてません。民法に触れると言われますが、私個人としては建築地域の慣習や、隣人の許可が得られた場合などは違法にならないので、即失格となるほどの減点ではないのではないかと考えております。勿論、民法に抵触する恐れがあるため減点なのは確実だと思いますが、貴殿のお考えをお聞かせ願えないでしょうか。
大きなお世話かと思ったのですが気になってご連絡をさせて頂きました。
失礼致します。