井澤ですいざわ

令和2年一級建築士試験「設計製図の試験」の課題が公表されました。
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【課題名】高齢者介護施設
<要求図書>
 ・1階平面図・配置図(縮尺1/200)
 ・各階平面図(縮尺1/200)
  ※各階平面図については、試験問題中に示す設計条件等において指定します。
 ・断面図(縮尺1/200)
 ・面積表
 ・計画の要点等
 
(注1)居宅サービスを行う施設及び居住施設で構成する建築物の計画とする。
(注2)「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」に規定する特別特定建築物の計画とする。
(注3)建築基準法令に適合した建築物の計画(建蔽率、容積率、高さの制限、延焼のおそれのある部分、防火区画、避難施設 等)とする。

<建築物の計画に当たっての留意事項>
 敷地の周辺環境に配慮して計画する。
 バリアフリー、省エネルギー、セキュリティ等に配慮して計画する。
 各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする。
 建築物全体が、構造耐力上、安全であるとともに、経済性に配慮して計画する。
 構造種別に応じた架構形式及びスパン割りを適切に計画するとともに、適切な断面寸法の部材を計画する。
 空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する。

<注意事項>
「試験問題」及び上記の「建築物の計画に当たっての留意事項」を十分に理解したうえで、「設計製図の試験」に臨むようにして下さい。
なお、建築基準法令や要求図書、主要な要求室等の計画等の設計与条件に対して解答内容が不十分な場合には、「設計条件・要求図面等に対する重大な不適合」等と判断されます。
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発表課題の主なポイントは次のとおりです。

1.「高齢者介護施設」「居宅サービスを行う施設」「居住施設」とは

①「高齢者介護施設」は、法律で定められた施設名称ではなく、高齢者の介護を行う施設の総称です。総称という点で、設置基準などが絞りにくい課題です。

②「居宅サービスを行う施設」は、いわゆる「通所介護」のための施設です。
利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を営みながら利用する施設として、日帰り介護を行う老人デイサービスセンターが代表的です。

③高齢者介護施設における「居住施設」は、いわゆる「入所介護」のための施設です。
入所(寝泊り)して介護を受ける施設として、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)が代表的です。

これらの施設は、単独で開設されることは少なく、特別養護老人ホームの建物内に老人デイサービスセンターが設置され、食事や入浴施設を共用する場合なども多いです。
 

サービスおよび施設

事業概要







ビス

日帰り介護

(デイサービス)

日帰りリハビリテーション

(デイケア)

送迎用バス等で通所介護(デイサービス)センターに通う高齢者に、入浴、食事、健康審査、日常動作訓練等のサービスを提供

訪問介護員

(ホームヘルパー)

日常生活に支障のある高齢者がいる家庭を訪問して、介護・家事サービスを提供

短期入所生活介護

(ショートステイ)

寝たきり老人等の介護者に代わって、特別養護老人ホーム等で短期間、高齢者を預かる

在宅介護支援センター

身近なところで専門家による介護の相談・指導が受けられ市町村の窓口に行かなくても必要なサービスが受けられるよう調整




設サ

ビス

特別養護老人ホーム

(介護老人福祉施設)

常時介護が必要で、家庭での生活が困難な高齢者のための福祉施設

老人保健施設

(介護老人保健施設)

入院治療は必要ではないが、家庭に復帰するために機能訓練や看護・介護が必要な寝たきり老人等のための施設

介護利用型軽費老人ホーム

(ケアハウス)

車いすや訪問介護者(ホームヘルパー等)を活用し、自立した生活を維持できるよう工夫された新しい軽費老人ホーム


2.各階平面図は、試験問題中で指定

要求図書の中で平面図の枚数が指定されておらず、「各階平面図については、試験問題中に示す設計条件等において指定します。」とされています。
これは、階数が試験当日にならないと分からないということですが、近年の本試験では平面図が3面要求されていることから、次の可能性が高いといえます。
・「1階平面図・配置図」「2階平面図」「基準階平面図
基準階平面図は例えば「3~5階」などです。
階数が高くなると、高さの制限や、採光なども十分に考慮しなければなりません。

3.「バリアフリー法の特別特定建築物の計画」

令和元年の本試験「美術館の分館」においては、試験問題中で「特別特定建築物に該当し、『建築物移動等円滑化基準』を満たすものとする。」と出題されました。適合義務である「建築物移動等円滑化基準」です。
今年は「高齢者福祉施設」ですので、平成11年の本試験「高齢者施設を併設した集合住宅」のように、望ましい基準としての「建築物移動等円滑化誘導基準」を満たすことが求められる可能性も考慮する必要があります。

4.「建築基準法令に適合した建築物の計画」

建築基準法令への適合は、計画の最低条件です。
「建築基準法令に適合した建築物の計画」の具体例として、昨年と同様に「建蔽率、容積率、高さの制限、延焼のおそれのある部分、防火区画、避難施設 等」が挙げられています。
前述のとおり、特に今年は「基準階」として中層建築物の可能性がありますので、高さの制限や、採光なども十分に考慮しなければなりません。

5.「建築物の計画に当たっての留意事項」

・6項目からなる「建築物の計画に当たっての留意事項」の最初は「敷地の周辺環境に配慮して計画する。」とされました。近年明記されていた「パッシブデザイン」や「空調負荷の抑制や自然光の利用」については、今年は明記されませんでした。
・2つ目のバリアフリー以降の項目は昨年と変わりません。
・「建築物の計画に当たっての留意事項」の内容は抽象的ではありますが、採点に大きく関わる非常に大事な内容です。昨年と同様、試験当日の課題文にはあらためて記載されないと考えられますで、「注意事項」にあるとおり、「十分に理解したうえで」試験に臨まなければなりません。

6.「注意事項」

注意事項にあるとおり、建築基準法令や要求図書、主要な要求室等の計画等の設計与条件に対して解答内容が不十分であるとして「設計条件・要求図面等に対する重大な不適合」と判断されると不合格になります。
このように設計与条件に従った計画が強く求められています。これは設計製図試験の鉄則です。

7.過去の類似課題

過去の主な類似課題は次のとおりです。
平成27年「市街地に建つデイサービス付き高齢者向け集合住宅」
平成23年「介護老人保健施設」
平成11年「高齢者施設を併設した集合住宅」

発表課題から考えられる主なポイントは以上です。

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