井澤ですいざわ

以下の記事について、
「令和6年 一級建築士試験 受験要領」において
「『建築法規等』に関する出題に当たっては、告示も含まれます。」
と初めて明記されたことによって、
令和6年から状況が大きく変わりました

また、TAC法令集は、奇跡的なタイミングでまさに令和6年度版(2024年度版)から告示を掲載しています

詳しくは「『令和6年 一級建築士試験 受験要領』が公表されました」の記事をご確認ください。

歴史的経緯としてしばらくの間、以下の記事を残しておく予定ですが、
くれぐれも誤解のないようにご注意ください。

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井澤ですいざわ
「建築士試験に告示の知識は必要か?」
答えは「NO」です。必要ありません。

1.この書き込みのきっかけとなったご質問と回答
先刻、このブログのコメントに次のようなご質問をいただきました。

「TAC法令集になぜ告示がついていないのでしょうか。
TACの法令集はとても使いやすいのですが、
唯一、255号の告示が関わる問題は対応できず悩んでいます。」

ここで、「255号の告示」とは、平成27年国土交通省告示第255号
(建築基準法第27条第1項に規定する特殊建築物の主要構造部の構造方法等を定める件)です。
「特定避難時間に基づく準耐火構造」を定める告示です。(以下「H27告示255号」という。)
ちょうどTAC一級建築士学科本科生でも
防火関係規定の講義が終わった良いタイミングですので、
書き込みします。かなり長文になります。

ご質問の回答として結論だけを示せば次のようになります。

「法規の試験において、過去に告示を根拠とした出題はありません(※)。
したがって、建築士試験に告示の知識は必要ありませんので、
建築士試験対策を主目的としたTAC法令集では告示を掲載しておりません。」

(※)例外は、わずかに平成29年No.13肢3の「高力ボルトの短期に生ずる力に対する引張りの許容応力度は、引張りの材料強度の2/3の値である。(誤)」ぐらいです。根拠は令94条に基づくH12告示2466号第2。この問題はおそらく「高力ボルト」ではなく「ボルト」と出題するつもりだったのではないか、と推測しています。その場合の根拠は令90条表1で、やはり誤り。

2.建築士試験と告示について
本試験の問題作成者は、告示を見ないでも建築基準法、施行令、施行規則を根拠として
正誤の判断ができるように注意深く配慮した問題を出題してくれているのです。
(注)試験機関が告示を考慮しないと明言しているわけではありません。
   少なくとも今までは、まったくと言ってよいほど告示を根拠とした出題はないのです。

もしも告示を根拠とした問題があるならば、
それは資格学校などが作ったオリジナル問題なのです。
たとえ資格学校などの過去問題集に掲載されているとしても、
例えば法27条関係であれば、平成27年に大改正があり、
H27告示255号が制定されたことにより、
それ以前の過去問がそのまま使えなくなったため、
代わりに資格学校などが作ったオリジナル問題なのです。

3.出題例
■問題
防火地域及び準防火地域以外の区域内において、延べ面積2,500㎡、地上3階建ての学校を新築する場合は、耐火建築物としなければならない。(平成28年No.7肢4)
■解答
誤。この問題は、平成27年の大改正後の出題です。この問題は、当該学校が法27条1項一号及び二号(法別表1(3)項(ろ)欄及び(は)欄)に該当し、法27条1項本文及び令110条により、「特定避難時間に基づく準耐火建築物(令110条一号)」又は「耐火建築物(令110条二号)」としなければならないということが分かれば、「耐火建築物としなければならない。」という記述は誤りと判断できる問題なのです。このとき、H27告示255号を見る必要はありません。

4.平成27年国土交通省告示第255号(建築基準法第27条第1項に規定する特殊建築物の主要構造部の構造方法等を定める件)について
H27告示255号は、令和2年2月26日に改正され、従前は、木造3階建て共同住宅(木3共)や木造3階建て学校(木3学)など、特定の要件を満たす建築物に関する構造方法等だけが定められていましたが、改正により、これらの建築物に限らず、法27条1項各号のいずれかに該当する全ての特殊建築物について、「特定避難時間に基づく準耐火構造」とする構造方法等が定められました。
詳細を知りたい方は、下記の国土交通省「技術的助言」を参考にしてください。
なお、当該告示は令和2年12月28日にも改正されています。
本当に残念なことに、その告示自体を無料で見られるサイトは今のところ見当たりません。

5.まとめ
建築士試験に告示の知識は必要ありません。
建築士試験のためにH27告示255号など難解な告示を理解するために時間を割くのは、本当にもったいないです。