井澤ですいざわ

昨日、一級建築士学科試験を受験された皆様、緊張の中での長丁場、本当にお疲れ様でした。
実力は発揮できたでしょうか。

TACでは、普段の講義やテストはもちろん、公開模試直前演習で学習した内容から数多く出題され、得点UPに役立ったのではないかと思います。

TACの合格推定点は次のとおりです。
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■総得点
 90点
■科目基準点
 各科目過半(計画11点、環境11点、法規16点、構造16点、施工13点)
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計画が昨年よりもかなり易しくなり、構造がやや難しい、施工が難しいことを総合すると、全体として標準的な難易度であることから、総得点は90点をTACの合格推定点とします。

・計画 易しい
・環境・設備 例年どおり
・法規 例年どおり
・構造 やや難しい
・施工 難しい

以下、各科目の特徴などを説明します。

 ■計画 
●難しかった昨年の反動からでしょう、標準的な難易度に戻りました。
●実例建築物の出題が昨年の8問から5問に大幅に減り、その全てに過去問が含まれていたこと、新規問題もミレニアムドーム2000(No.3)、プルーイット・アイゴー(No.7)、国際子ども図書館(No.17)など著名な建築がふくまれていたことが、易しくなった理由と言えます。
環境配慮(No.1カーボンニュートラル)、木材等(No.5)、木造の屋外階段等の防腐措置(No.5)、防犯計画(No.7)、高齢者等への配慮(No.9、12、16)、住宅セーフティネット制度(No.12)など、極めて教育的、啓蒙的な出題であったと思います。この出題傾向は今後も続く重要なテーマと思われます。
●新規問題の道後温泉(No.11肢1)はTAC公開模試No.16の解答肢です!「歴史地区の保存と歩行者ネットワーク」の点で注目されているため出題が予想されたのです。

 ■環境・設備 
●環境・設備は、例年どおりの難易度でした。
●次のような過去問の応用が印象的です。過去問を正しく理解することの重要性が分かります。
 ①過去の誤りの記述が正しい記述として出題された例として、日照図表(No.1)。
 ②カラレーション(No.9肢1)は過去問の「音色の変化」を「音の高さの変化」にした誤り
 ③ひっかけ問題とも言えるようなAPFの定義の分母と分子の逆転(No.19)。
かなり古い過去からの出題である立体角投射率(No.7)、床衝撃音遮断性能に関する等級・空気音遮断性能に関する等級(No.10)、クリーンルームの空気清浄度(No.13)、配線用図記号(No.16)も目立ちました。
●新規問題のブーミング現象(No.1肢3)はTAC公開模試No.9の解答肢です!
●新規問題の潜熱回収型ガス給湯機(No.15肢1)はTAC公開模試No.14ほぼそのままの出題です!
●新規問題のNearlyZEB、ZEB Ready、ZEB Oriented直前演習でも講義でも扱いましたね!

 ■法規 
●法規は、例年どおりの難易度でした。
●次のような新しい出題形式が印象的です。より実務に近い出題形式と言えます。
 ①No.23(建築士法による義務付けの対象等)・・・解答肢2について、一級・二級・木造建築士の定期講習の受講義務は、建築士事務所に属する場合に限られることを暗記で対応して欲しかったところです。
 ②No.28(窓の寸法等から法適合を判断する問題)・・・排煙上の無窓居室(床面積の1/50未満)に該当するため、ハの記述が誤りであることが分かると、解答肢が2のみに絞れました。
●No.1は、平成24年にも出題されている、面積、高さ、階数についての良問です。これも、より実務に近い出題形式と言えます。
●No.2肢4は、木造の屋外階段等の防腐措置に関連する時事的な出題と言えます。
●No.17の容積率、No.18の高さの最高限度の計算問題は標準的な難易度ですので、確実に得点したいところです。
●No.22肢4は、二級・木造建築士として3年以上の所定の業務に従事した後、管理建築士となっていれば、一級建築士を取得してすぐに一級建築士事務所の管理建築士になれるという内容です。

 ■構造 
次のような点から、やや難しい問題でした。
●力学の問題では次のように過去問を応用させた問題が出題され、過去問の正しい理解が問われています。
 ①No.1(垂直応力度分布から圧縮軸力、曲げモーメントを求める問題)は、複数出題されている過去問では切りよく(たまたま)フランジが曲げモーメント、ウェブが圧縮軸力のように分かれていたものが、今年は設問図-1の縦部材(高さ6a部分)にも一部曲げモーメント負担分が生じているという点で、難度が上がっています。
 ②No.7(ラーメンの固有周期)は、複数出題されている過去問では1スパンであったものが、今年は2スパンの建築物Bも含まれているという点で、難度が上がっています。
No.15とNo.16(ともに鉄骨構造)は、ともに解答肢は難問ですが、残り3肢は過去問です。しかも3肢とも、限界細長比、断面二次半径など「正確に覚えるのが難しい過去問」の典型例です。このNo.15とNo.16の結果を見るだけで、正解できた方は合格と言っても過言ではないと思います。このような問題が解けるようになることこそ「合格への道」と言えます。
●No.18肢4は、山形鋼筋かい材の有効断面積は、突出脚の無効部分を除くという過去問の応用問題と言えます。
●新規問題の「積雪後の降雨を考慮した積雪荷重の強化(No.8肢3)」は直前演習でも講義でも扱いましたね!

■施工 
施工は、近年、難しい出題が続いています。
●No.13(鉄骨工事)の解答肢は2で、高力ボルト用の孔あけ加工について、過去問で頻出のとおりドリルあけは正しいのですが、「工事現場」でのドリルあけは不可、という初めての論点からの誤りでした。この問題の教訓は、やはり、肢1の鉄骨製作工場のグレードの順番であるJ、R、M、H、S(特にRとM。Mは真ん中のM)、肢3の高力ボルト摩擦面のすべり係数は0.45以上(一方、溶融亜鉛めっきは0.40以上)、高力ボルトのねじ山の出は1山から6山まで(一方、ただのボルトは3山以上)を正しいと確信を持てたか、なのです。
●No.16肢1について、「防水シートは引っ張ると必ず戻るから引っ張らない(一方、カーペットのグリッパー工法は端部のグリッパーに引っ張って引っ掛ける)」これが比較整理できている必要があります。
直前演習からたくさん出題されましたね! スパイラル筋の重ね長さは50d以上(No.8図の問題)、型枠支保工の鋼材の許容曲げ応力(No.9)、湿潤養生10N/㎟以上(No.9)、塩化物イオン量0.30㎏/㎥(演歌はおっさん)、鉄骨溶接部の表面割れは50㎜以上除去、ブローホールなどは20㎜以上除去して補修溶接(No.14)、設計・監理の約款において「委託者の責めに帰することができない事由」による損害賠償は請求できない(一方、業務報酬は請求できる)(No.25)などなど、本当に数えきれないほど良く当たりました。

総評は以上です。

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