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皆さん、こんばんは。講師の清田(せいた)です。
まずは本日、一級建築士設計製図試験を受験された皆さま、本当にお疲れ様でした
無事に描きあげることは出来ましたでしょうか?
第一報として、試験の講評をどこよりも早くお届け致します


まず、大きな特色としては、非常に「自由度が高い課題」であったことです
建築物の「階数」も「床面積の範囲の指定」もなく、南北の道路からの道路斜線制限がかからない範囲で、かつ基準階の貸事務室A、Bの合計面積をクリアする計画が求められました。「何階建てにすればよいのか?」から考えさせる、実務に近い試験とも言えますね


今年の課題の主な特色は、次のとおりです。

1.事務所ビル
・「貸事務所ビル」として収益性が求められました。ただし、収益性に関しては、レンタブル比以外での対応が記述において求められました。
・要求室表内の貸事務室A、Bについて、床面積の「基準階の合計3,000㎡以上」は、貸事務室A、Bの合計が3,000㎡以上と読むべきか、文章通り、基準階(コアなども含む)の合計が3,000㎡以上と読むべきか、非常に解釈に迷うところで多くの方が悩んだ所でしょう。
・基準階が「2階から最上階の直下階」という条件もサプライズでした。最上階には、シェアオフィスが求められ、2つの貸事務室とは別運営の設定でした。
・天井高2.8m以上の高い天井高の要求でしたが、ダクトを通す計画でなければ、階高4mで問題なかったと思います。
・コミュニティホールは無柱空間で、設置階の指定はありませんでしたが、使用目的などから多くの方が1階に設けたようです。

2.事務所以外の用途
レストラン1室の要求でした。「建築物の外部から直接出入り」及び「屋外テラス席」の要求から、1階に計画することが順当です。課題文の要求では、異種用途区画は求められていませんでしたので、〇特の図示は必要ないと読み取ることが適切です。

3.屋外施設
(1)屋上庭園:シェアオフィスの利用者が利用し、シェアオフィスのラウンジに隣接する条件でしたので最上階への配置が適切です。
(2)駐車場:計3台の要求でした。サービス用はレストラン用なので、厨房への搬入動線などに配慮した計画が求められました。
(3)駐輪場:レストランの客用の要求なので、レストランの出入口への動線に配慮した配置が適切です。

4.地盤条件(地盤略断面図)
地盤略断面図が示され、支持層(N値=50以上の砂礫層)がGL-20mと非常に深い位置に設定されており、本課題の一番のサプライズポイントでした。課題文には、過去の課題文にはあった「杭打ちの必要なない。」の記載もなかったことから「杭基礎」の計画を要求していると読み取れます。なお、杭基礎の要求は過去の試験では一度もありませんでしたので、初出題となります。

5.設備について
・空調方式は、自分で方式を決める要求でしたが、空冷ヒートポンプパッケージ方式天井カセット型であれば天井ふところを抑えられ、階高4mで天井高2.8mが確保できました。
・給水方式は、受水槽+給水ポンプが求められましたので、ポンプ直送方式でした。
・貸事務室A、Bについての排煙方式が記述で求められました。貸事務室の開口部を利用した自然排煙を採用すればよいでしょう。

6.法規について
・課題文の中に、道路斜線制限の斜線勾配の記載がありませんでした。近隣商業地域及び準防火地域でしたので、これまで通り1.5の勾配で検討すればよいでしょう。
・南北の幅員が同じ2面道路でしたので、使える道路斜線の緩和はセットバック緩和のみでした。
・要求図書内において、延焼ラインの記載要求のところで「建築物の延焼のおそれのある部分の有無にかかわらず必ず記入する」という新しい表現がありました。建物に延焼ラインがかからずとも、必ず図示しなさいと読み取ることができます。
・バリアフリー法の「建築物移動等円滑化基準」を満たす計画とともに、屋上庭園やレストランの屋内外の出入口部分に段差なしの要求がありました。また、利用者の多様性に配慮した計画とすることが求められました。

7.要求図書
細かい内容の描き込みの要求があり、漏れなく図示できたかがポイントです。
・1階平面図・配置図への「建築物からの敷地境界線までの最小後退距離」の図示
・基準階平面図への「記述(7)に記入したペリメータ―ゾーンの切断位置」、「シェアオフィスの出入口及び室内プラン」の図示
・断面図への「塔屋を除く建築物の高さ」の図示
・断面図への「南北の道路からの道路斜線、斜線勾配、最小後退距離、計算式等」の図示
・基礎の図示

8.計画の要点等について
・省エネ及び二酸化炭素排出量の削減について、問われました。対応例として以下に挙げます。
①パッシブ技術→建築的手法として、ルーバー、庇、LOW-E複層ガラスなど
②アクティブ技術→機械的手法として、ヒートポンプ式空調など
③その他(創エネ技術、材料の選定等)→太陽光発電システムなど
・貸事務室のペリメータ―ゾーンにおいての断面詳細が分かる図やイラスト(縮尺1/50程度)と大きな作図が求められました。



講評は、以上になります。
長時間にわたる試験、及び、長きにわたる受験勉強、本当にお疲れ様でした。
「果報は寝て待て」です。
皆様の努力が実り、合格されることを祈っております
しばらくはゆっくりと休んでください
本当にお疲れ様でした




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