こんにちは、TAC講師の清田です
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まずは本日、一級建築士試験に合格された皆様、本当におめでとうございます
今まで積み上げてきた努力、乗り越えてきた困難を思い出し、喜びに浸ってください

それでは、公表された合格率、標準解答例、合格基準等から令和4年「設計製図の試験」のポイントについて講評します。

まずは、普及センターの「標準解答例」及び「合格基準等」をざっと参照した上で読んでみてください。
標準解答例はこちら→1k-2022-2nd-hyojunkaito-r.pdf (jaeic.or.jp)
採点のポイントはこちら→1k-seizu-gokakuhappyo-202212r3.pdf (jaeic.or.jp)

■合格率とランク■
令和4年のランクⅠ~Ⅳの割合は、下記のとおり発表されました。

 

実受験者数

合格者数

ランクⅠ

ランクⅡ

ランクⅢ

ランクⅣ

R4

10,509

3,473

33.0

6.1

32.4

28.5

R3

10,499

3,765

35.9

6.3

26.9

30.9


昨年(R3)と比較すると、実受験者数はほぼ変わらない人数にもかかわらず合格者数は300名弱少ない結果でした。
全国合格率に関しては33.0%で、直近5年の中では一番低い合格率となり、R4の設計製図の試験は狭き門であったことがわかります。
また、ランクⅢとランクⅣを合わせた割合は昨年より3.1%増えましたが、ランクⅢとⅣでおおむね約6割という結果はここ数年の傾向と変わりませんでした。

このランクⅢ、Ⅳに該当するものが多かった要因として、試験機関からは具体的に以下のものが挙げられています。
・設計条件に関する基礎的な不適合
(1)要求している主要な室等の床面積の不適合
(2)階段の不成立
(3)地盤条件や経済性を踏まえた基礎の構造不適格
・法令への重大な不適合:
(4)道路高さ制限、(5)避難経路等  

(1)要求している主要な室等の床面積の不適合
要求の床面積はすべて「〇〇㎡以上」でしたので、その条件を満たさないものや「基準階の合計3,000㎡以上」という要求に対して、「貸事務室A・Bの床面積の合計を3,000㎡以上」として計画しなかったものについては、ランクⅢ、Ⅳに該当した可能性も考えられます。
(2)階段の不成立
上下階の階段の位置の不整合などは、ランクⅣで失格でしょう。
(3)地盤条件や経済性を踏まえた基礎の構造不適格
深い支持層に対して「杭基礎」の計画が求められました。地盤改良などの計画とした場合についての採点上の判断は今後の検証が必要でしょう。
(4)・(5)法令への重大な不適合
昨年までここに記載のあった「延焼ライン」、「防火区画」については、姿を消したことから多くの受験生が試験機関の要求通りにクリアできるようになったと考えられます。
一方で、道路斜線以外に「避難経路」が新たに加わり、歩行経路や敷地内通路の記入漏れなどが今後の課題となりそうです。

それでは、以下に、標準解答例①、②(以下、それぞれ①、②と略して記載します)から確認しておくべきポイントを掲載します。

1.全体計画

 

コア配置

階数

グリッド計画

片側コア

7階建て

7×7(一部7×6)

センターコア

6階建て

7×6


・想定どおり、コアの計画は「片側コア」と「センターコア」の2パターンの解答例が出てきました。どちらでも解ける課題であったことが分かります。TACでは全9課題において「片側コア」に絞り込み効率的に学習を行ったので、本試験にも十分に対応できたことでしょう
・階数も想定どおり、「6階建て」と「7階建て」の2パターンの解答例でした。
・グリッド計画は、7×77×6のどちらでも計画可能で、標準的なグリッド計画で解けたことが分かります。

2.断面計画

 

階高(1階)

階高(基準階)

階高(屋上階)

①(7階建て)

4,600

4,200(6階のみ4,600

4,000

②(6階建て)

4,200

4,200

4,000

・貸事務室の要求天井高2,800以上を確保するためには、最低でも階高4,000は必要となります。①では、基準階の途中の6階のみ階高を4,600に上げていますが、屋上庭園の客土処理のため、スラブを下げて計画したと想定されます。

3.駐車場
事務所部門用の2台(1台は車椅子使用者用)とレストランのサービス用の1台の合計3台の要求でした。
・①、②ともに、駐車場は「北側配置」で、切り開きを2箇所設けた計画としています。
・①、②ともに、事務所部門用の駐車場から建物内部へのアクセスは、主出入口からではなく「通用口」からとして計画しており、通用口と車椅子使用者用駐車場は「近接」した配置としています。
・レストランへの搬入動線の明確な条件はありませんでしたが、①、②ともにレストランのサービス用駐車場の配置は「搬入動線に配慮」した計画となっています。


4.駐輪場
・①は、北東側にピロティ形式で計画しており、東側を南に向かって回り込んでレストランへアクセスする計画です。
・②は、南側の道路に面して計画し、一度、道路に出てからレストランへアクセスする計画です。

5.レストランの計画
レストランは営業時間の指定があり、「建築物の外部から直接入れるように」という条件でした。
・①は、建物内部とは壁で仕切られ、「建築物の外部からのみ入れる計画」です。
・②は、建築内部との境に扉(時間外は閉鎖)があり、「建築物の外部からも内部からも入れる計画」です。
どちらの計画でも良いことが読み取れます。

6.シェアオフィスの計画
・シェアオフィスの貸室の要求は、a(5室以上)、b(5室以上)、c(10室以上)でしたが、①、②ともに要求の必要最低室数での計画でした。
・①、②ともに、事務室及び貸室cについては「無窓」の計画となっており、外壁に面して設けることがマストではないことが読み取れます。

7.セキュリティについて
・①は、1階エントランスホールに「セキュリティゲート」を設け、上階へ行く前にセキュリティをかけています。
・②は、1階はフリーで、基準階の貸事務室の出入口の扉を「カードキー」としてセキュリティをかけ、さらに貸事務室内部に「受付」を設けてチェックする計画としています。

8.階段
・①、②ともに階段のサイズは建築基準法上の階段として計画しており、バリアフリー法の誘導基準を満たす必要がなかったことが分かります。

9.地盤条件(地盤略断面図)への対応
・①、②ともに「杭基礎」の計画です。断面図には「場所打ちコンクリート杭」、「既製コンクリート杭」が表現され、ともに支持層へ1mほど貫入しています。

10.法規(道路斜線)
・①の断面図では、塔屋に道路斜線がかかっていることから、建築面積の1/8以下という想定であれば、問題ないという判断が読み取れます。
・平面図上の「建築物から「敷地境界線」までの最小後退距離」を記入する条件において、「道路境界線」側だけでよいのか、東西の「敷地境界線」側も記入するのか、迷うところでしたが、①、②ともに、四方に記入がありました。

11.法規(道路斜線:庇の扱い)
・①の基準階平面図の北側の庇に補足事項(庇の高さ、庇の合計の幅)があり、その内容から「通用口の上部庇についても一定の条件を満たせば、セットバックの緩和を受けてよい」ということが読み取れました。
今後の学習の参考になる重要な部分です。

12.法規(排煙)
「計画の要点等」において、貸事務室の「排煙」について問われました。
・①、②ともに、断面図の貸事務室の外壁開口部には、欄間(高さ800)が図示されており、「自然排煙」のアピールと考えられます。
・①、②ともに、断面図の貸事務室と廊下の間の壁は、RC壁の表現としており、「防煙壁」のアピールと考えられます。


13.その他(表現など)
標準解答例に全てならう必要はありませんが、今後の学習に向けて以下のような特徴的な内容は知っておくべきでしょう。
・階段内部に、大梁の見え掛かりの表現が入っていた
・①の基準階の階段に「階段の段数の表記」があった
(基準階の途中(6階)で階高が変わるため、誤解のないように記載か?)
・歩行経路の記入の仕方(移動可能な机、椅子についても、避けて経路を記載している)
・扉の表記あり(出入口の扉の開き表現の記載がされた。過去の標準解答例では表現があったり、なかったり)

R4

R3

R2

R1

H30

H29

あり

あり

なし

なし

あり

なし


・〇防の平面図上の記入の仕方(範囲を示して〇防を記入)
・無柱空間のPC梁を受ける柱の表現(正方形の柱。過去の標準解答例では、長方形の表現であった)

R4

R3

R2

R1

H30

H29

正方形

無柱空間なし

無柱空間なし

長方形

長方形

無柱空間なし


・EPS(各階に2箇所計画あり)
・延焼ライン(敷地オンラインの表記はなかった)

14.まとめ
前述のように試験機関からランクⅢとランクⅣの要因として「設計条件に関する基礎的な不適合」「法令への重大な不適合」が挙げられているとおり、法令を守りながら設計条件に忠実に計画をまとめることが合格への道だということを、昨年に引き続いて強く感じさせる試験となりました。


あらためて、合格された皆様、心よりお祝い申し上げます
また、残念な結果だった方、少しの間だけ試験のことは忘れ、ゆっくり休んでください。
ただし、本日から令和5年試験に向けてのカウントダウンが始まったことを忘れずに
TACでは引き続き、受験生の皆様を全力で応援いたします




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