TAC建築士講師室ブログ

TAC建築士講座の講師・スタッフのブログです。

一級建築士 学科対策

井澤です。いざわ

次の2つの問題の正誤を考えてみてください。今年の一級とニ級の「構造」の問題です。

25一級構造〔No.15〕枝1
『地震時の変形に伴う建築物の損傷を軽減するために、靱性のみに期待せず強度を大きくした。』
25二級構造〔No.18〕枝1
『靱性に乏しい構造であっても、十分に強度を高めることによって、耐震性を確保することができる。』

どちらも「正」です。
耐震性は、主に「強度」×「靱性(塑性変形能力)」で評価されます。
両者を兼ね備えたものが、まさに「強靭」ですね。

靭性とは粘り強さです。傷ついても容易に倒れない粘り強さです。
靭性に期待する場合は、「変形に伴う建築物の損傷」が残ります。それでも、
「変形が残る」 → 「地震エネルギーが変形に費やされる」 → 「地震エネルギーが早く減衰する」
に期待するわけです。

ただし、近年の建築士の出題を見ていて、私は出題が靭性に偏りすぎてはいないか、ということを強く感じていました。
まるで、強度よりも靭性のほうが大事であるかのように。
前述の2つの問題を見て、出題者も同じ疑問を持ったのではないか、という印象を受けました。

井澤です。いざわ

今年の一級建築士学科試験「構造」で難しかった問題の一つに〔No.10〕木造軸組工法の耐震改修が挙げられます。

耐震改修の方法として、最も効果の低いものはどれかという問題です。(一部簡略化)
1. 既存の無筋コンクリート造の布基礎に接着系のあと施工アンカーによる差し筋を行い、鉄筋コンクリート造の布基礎を抱き合わせた。
2. 1階の床下地材を、挽板(ひきいた)から構造用合板に変更。
3. 1階の耐力壁が偏在していたので、2階床組の水平剛性を高めた。
4.
 屋根葺き材を、日本瓦から住宅屋根用化粧スレートに変更。

正答は2.です。
3.4.は過去問の応用で解けるとしても、枝1.2.は新テーマだったので難しかったと思います。
1.は抱き合わせ基礎と呼ばれ、効果的な耐震改修方法です。
2.について
地震力は、2階床組や小屋組等の水平構面から、柱や耐力壁等の垂直構面に伝わり、土台、基礎、地盤へと伝わります。したがって、2階床組や小屋組等の補強は有効なのですが、1階では耐力壁等から、土台、基礎、地盤へと力が伝わり、1階床組を介さないため、1階の床下地材を、幅の狭い挽板から構造用合板に変更して補強しても、耐震性の向上にはほとんど効果がありません。

実はこの問題、なんと木造建築士試験のリメイクでした。
平成24年「構造」No.18です。
http://www.jaeic.or.jp/mk-mondai-h24-gakka34.pdf

木造建築士試験の試験機関は、一級・二級建築士と同じく(公財)建築技術教育普及センターです。
受験者数の減少など課題もあると思いますが、さすが「木造建築士」という感じの出題でした。

井澤です。いざわ

建築用語のうちで、一般の方には違う意味になってしまうものの代表と言えば、ラーメンとクリープが挙げられます。

クリープとは、比較的小さな力であっても、外力が長時間継続して作用したときに、時間の経過とともにひずみが増大する現象です。
クリープは木材とコンクリートで生じやすく、クリープ変形が生じた場合、その荷重を取り除いても変形は元の状態には戻りません。

クリープは
Creepと書きます。
goo辞書によれば、Creepには「乗り物がのろのろと進むこと。特に、オートマチックトランスミッション
を搭載する車両などで、エンジンがアイドリングの状態でアクセルを踏まなくても徐々に前へ進む現象のこと」という意味もあります。徐々にひずみが進行するのでクリープというわけです。

さて、「お約束」といった感
がありますが、コーヒーに入れるクリープのほうは 
Creap です。
こちらは「Creamy Powder」の略
です。

テレビで聞いた話ですが、しょうゆラーメンにクリープを入れるととんこつ味になるとか・・・。真偽のほどはいかに。

井澤ですいざわ

昨日に引き続き・・・。
「Worst question of the year」として、まずは1級の法規で問題に疑問が生じているNo.19とNo.23が挙げられると思います。そのあたりの詳細についてはホンダさんの記事を参照してください。

それを除いて考えると、なんと言っても2級の計画No.6で出題された熱損失係数の計算問題でしょう。
熱損失係数は、省エネ法の改正で今年10月に廃止されるんですよ(経過措置1年半)
熱損失係数に代わって外皮平均熱貫流率という新しい指標が導入されます。
それなのになぜ今年出題されなければならないのでしょうか?

井澤ですいざわ

今年の学科本試験の解答速報をしていて、非常に印象に残った1問があります。

1級建築士、2級建築士を合わせた全科目の中で、私が今年最も良問だと思った問題です。

独断と偏見で選んだ「Best question of the year」は、2級建築士 学科Ⅲ構造No.22枝4です。

1級を目指している方にも十分ためになる問題ですから考えてみてください。

 

問題 『アルカリ骨材反応は、骨材中の成分がセメントペースト中に含まれる塩化物イオンと反応し、骨材が膨張する現象である。』

 

これは正しい記述ですか? 誤った記述ですか?

答えは「誤」です。 できましたか?

 

記述中の「塩化物イオン」の部分が「アルカリ金属イオン」の間違いです。

つまり、アルカリ骨材反応は、骨材中のシリカ成分(二酸化ケイ素)がセメントペースト中に含まれるアルカリ金属イオンと反応して、シリカゲルとなり、それが吸水膨張してコンクリートに亀甲状のひび割れやポップアウト(膨張圧によってコンクリート表面が剥離すること)を生じる現象です。

乾燥剤で有名なあのシリカゲルです!

 

一方、塩化物イオンCl-は、海砂を骨材として用いる場合等に注意が必要なわけですが、鉄筋表面の不動態皮膜を破壊し、鉄筋を腐食(さび)させます。したがって、コンクリートに含まれる塩化物イオン量は0.30kg/m3以下としなければなりません。

 

この2つ、つまりアルカリ骨材反応対策と塩化物イオン量の規制は、鉄筋コンクリートの耐久性を確保するために材料面で特に注意が必要なことなのですが、混同されることが多く、それを認識させるという点でこの問題は良問だと思います。

 

■アルカリ?

また、鉄筋の腐食(さび)を防ぐという点ではアルカリ性を保ち、中性化を防ぐことが重要ですが、「アルカリ」と言う場合には、この「アルカリ性」を指す場合と「アルカリ金属」を指す場合の2つがあることにも注意が必要です。

アルカリ性は、言うまでもなく酸性の反対で、水酸化物イオンOH-が多い状態を言います。また、アルカリ金属とは元素周期表(なつかしい!)の一番左にある金属をいい、Li(リチウム)Na(ナトリウム)K(カリウム)などがあります。

「アルカリ骨材反応」の「アルカリ」は「アルカリ金属」のことであって、「アルカリ性」のことではありませんよ!

 

紛らわしいことがいっぱいで、なかなか考えさせる問題です。

では、次回は「Worst question of the year」を・・・。

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