TAC建築士講師室ブログ

TAC建築士講座の講師・スタッフのブログです。

イザワ

井澤ですいざわ

平成25年 一級建築士学科試験の合格発表がありました。
合格された方、本当におめでとうございます。

今年は科目基準点の補正はなく、総得点が92点に引き上げられました。
総得点の平均点が想定より高かったということです。
総得点を引き上げても、合格率は19.0%と比較的高い結果となりました。

(公財)建築技術教育普及センター
http://www.jaeic.or.jp/pdf/1k-goukakukettei-h250910.pdf

解答番号も公表されていますが、TACが速報時点で公表していたものと同一でした。

学科Ⅲ法規では、No.6とNo.19を複数解答とする措置が講じられました。
この措置の理由について、上記のセンターのホームページで丁寧な説明が加えられています。

法規No.6の詳細は次報にて。

井澤です。いざわ

次の2つの問題の正誤を考えてみてください。今年の一級とニ級の「構造」の問題です。

25一級構造〔No.15〕枝1
『地震時の変形に伴う建築物の損傷を軽減するために、靱性のみに期待せず強度を大きくした。』
25二級構造〔No.18〕枝1
『靱性に乏しい構造であっても、十分に強度を高めることによって、耐震性を確保することができる。』

どちらも「正」です。
耐震性は、主に「強度」×「靱性(塑性変形能力)」で評価されます。
両者を兼ね備えたものが、まさに「強靭」ですね。

靭性とは粘り強さです。傷ついても容易に倒れない粘り強さです。
靭性に期待する場合は、「変形に伴う建築物の損傷」が残ります。それでも、
「変形が残る」 → 「地震エネルギーが変形に費やされる」 → 「地震エネルギーが早く減衰する」
に期待するわけです。

ただし、近年の建築士の出題を見ていて、私は出題が靭性に偏りすぎてはいないか、ということを強く感じていました。
まるで、強度よりも靭性のほうが大事であるかのように。
前述の2つの問題を見て、出題者も同じ疑問を持ったのではないか、という印象を受けました。

井澤ですいざわ

みなさん「WIRED」ってご存知ですか?
私が最近気になっているウェブサイトの一つです。

はじめてこのサイトに興味を持ったのは、
「高層ビルを作るクレーン」の作り方(動画)
を見たときでした。

他にも、ゲームで認知能力が向上するとか、「目に見えない」自転車用ヘルメットとか、興味深いレポートが満載です。
戦略ゲーム「StarCraft」で認知能力が大幅に向上:研究結果
「目に見えない」自転車用ヘルメット:スウェーデンの女子大生が発明


また、日経BP社さんのケンプラッツでも記事が採用されています。
「建築家の卵」のための新セット「LEGO Architecture Studio」発売
都市の「熱」を可視化:熱探知カメラで見た夏のニューヨーク

井澤です。いざわ
今日は今年のニ級の構造から。

No.22〕コンクリートに関する問題の枝2.です。
問題 『プラスチック収縮ひび割れは、コンクリートが固まる前に、コンクリートの表面が急激に乾燥することによって生じるひび割れである。』

正しい記述ですか?誤りですか?
答えは「正」です。

なぜコンクリートにプラスチックが???

って思いますよね~。

この「プラスチック」は、プラモデルのプラスチックのことではありません。
語源は同じですが、ここでの意味は、可塑性すなわち任意の形に変形できる、という意味です。
プラスチック収縮ひび割れは、コンクリートが固まる前のプラスチックな状態(可塑性のある、変形できる状態)において、直射日光や風による水分の蒸発によりコンクリート表面が急激に乾燥することよって生じるひび割れです。これが発生した場合には、コンクリートの凝結が終了する前に、表面のタンピング等により処置する必要があります。

井澤です。いざわ

今年の一級建築士学科試験「構造」で難しかった問題の一つに〔No.10〕木造軸組工法の耐震改修が挙げられます。

耐震改修の方法として、最も効果の低いものはどれかという問題です。(一部簡略化)
1. 既存の無筋コンクリート造の布基礎に接着系のあと施工アンカーによる差し筋を行い、鉄筋コンクリート造の布基礎を抱き合わせた。
2. 1階の床下地材を、挽板(ひきいた)から構造用合板に変更。
3. 1階の耐力壁が偏在していたので、2階床組の水平剛性を高めた。
4.
 屋根葺き材を、日本瓦から住宅屋根用化粧スレートに変更。

正答は2.です。
3.4.は過去問の応用で解けるとしても、枝1.2.は新テーマだったので難しかったと思います。
1.は抱き合わせ基礎と呼ばれ、効果的な耐震改修方法です。
2.について
地震力は、2階床組や小屋組等の水平構面から、柱や耐力壁等の垂直構面に伝わり、土台、基礎、地盤へと伝わります。したがって、2階床組や小屋組等の補強は有効なのですが、1階では耐力壁等から、土台、基礎、地盤へと力が伝わり、1階床組を介さないため、1階の床下地材を、幅の狭い挽板から構造用合板に変更して補強しても、耐震性の向上にはほとんど効果がありません。

実はこの問題、なんと木造建築士試験のリメイクでした。
平成24年「構造」No.18です。
http://www.jaeic.or.jp/mk-mondai-h24-gakka34.pdf

木造建築士試験の試験機関は、一級・二級建築士と同じく(公財)建築技術教育普及センターです。
受験者数の減少など課題もあると思いますが、さすが「木造建築士」という感じの出題でした。

↑このページのトップヘ