TAC建築士講師室ブログ

TAC建築士講座の講師・スタッフのブログです。

井澤式比較暗記法

井澤ですいざわ

前回は、木材だけでなく、鉄筋、鉄骨、コンクリートの許容応力度についても比較・整理しましたが、
木材については、前回のタイトル「No.388(木材の積雪時以外の許容応力度)」にもなっているとおり、「積雪時以外」の許容応力度を扱いました。今回は積雪時の木材の許容応力度を扱います。


■問題1
積雪時の許容応力度計算をする場合、木材の繊維方向の長期許容応力度は、通常の長期許容応力度に1.3を乗じた数値とする。(一級構造:平成23No.27
■問題2
積雪時の許容応力度計算をする場合、木材の繊維方向の短期許容応力度は、通常の短期許容応力度に0.8を乗じた数値とする。(オリジナル)

――――――――――――――――――――――
■解答
 問題1、2ともに正。
――――――――――――――――――――――

木材の「積雪時」の許容応力度だけは、通常の長期・短期許容応力度と異なる定めがあります。
なぜ「積雪時」だけ特別なのでしょうか?

前回説明したとおり、
■短期許容応力度 → 10分間ならその力が働いても大丈夫という限界値
■長期許容応力度 → 50年間その力が働いても大丈夫という限界値
です。

建築基準法では、
短期(10分間を想定)に生じる力として、風圧力、地震力、積雪荷重、
長期(50年間を想定)に生じる力として、固定荷重、積載荷重、積雪荷重、
を検討しますが、荷重継続時間の点で、積雪荷重は特別なのです。

すなわち、荷重継続時間
10分程度の積雪、つまり10分程度で融ける積雪の荷重はまず問題になりませんし、荷重継続時間50年程度の積雪、つまり50年も融けない積雪もまず無いのです。

積雪荷重では、短期と長期の荷重継続時間を次のように想定します。
――――――――――――――――――――――
■短期(中短期ともいう)→3日間程度(1回の大雪は3日間程度残る)
■長期(中長期ともいう)→3か月程度(積雪の期間は3か月程度)
――――――――――――――――――――――
そして、この荷重継続時間の影響が木材では大きいので、木材に限り、また、積雪時に限り、通常の長期許容応力度と短期許容応力度の値を補正して用いるのです。

補正の仕方は、
荷重継続時間が長いほど、許容応力度を小さくします。
前回説明したとおり、短い時間だったら頑張って大きな力にも耐えられるが、同じ力が長い時間かかると、へたばってしまうからです。

それをまとめたのが次の図です。前回の
No.388図に「積雪時の短期と長期」を加筆したものです。

―――――――――ポイント―――――――――

wood allowable stress 4

考え方は次の通りです。

■積雪時の短期
積雪時の短期(3日間)は、通常の短期(10分)よりも長い。
荷重継続時間が長いほど、許容応力度を小さくする。
(へたばってしまう)
積雪時の短期は、通常の短期の0.8倍
■積雪時の長期
積雪時の長期(3か月)は、通常の長期(50年)よりも短い。
→荷重継続時間が短いほど、許容応力度を大きくする。
(短い時間だったら頑張れる)
→積雪時の長期は、通常の長期の1.3倍

井澤ですいざわ

今回のテーマは木材の許容応力度ですが、鉄筋、鉄骨、コンクリートの許容応力度についても比較・整理します。とても大事な内容です。

■問題1
木材の繊維方向の短期許容応力度は、積雪時の構造計算をする場合を除いて、基準強度の2/3である。(一級構造:平成25No.27
■問題2
木材の繊維方向の短期許容応力度は、積雪時の構造計算以外の場合、長期許容応力度の2/1.1倍とされている。(一級構造:平成16No.22
■問題3
木材の繊維方向の長期許容応力度は、積雪時の構造計算以外の場合、木材の繊維方向の基準強度1.1/3倍の数値とする。(一級構造:平成20No.23改)

――――――――――――――――――――――
■解答
 問題1、2、3ともに正。
――――――――――――――――――――――

問題1は、短期が基準強度の何倍か、
問題2は、短期が長期の何倍か、
問題3は、長期が基準強度の何倍か、
を問う問題です。とても厄介ですね。

数値の丸暗記は難しいので、表で整理し、図でイメージをつかむことが大事です。

まずは基本事項を3つ理解してください。

1.許容応力度とは
許容応力度とは、部材に生じる応力度(力/断面積)について、安全に余裕を見て許容できる限界値をいいます。
許容応力度には、短期と長期があります。

2.許容応力度と基準強度の関係
これについてはNo.281(基準強度・設計基準強度)を参照してください。
http://kentikushi-blog.tac-school.co.jp/archives/46850810.html

3.短期許容応力度と長期許容応力度はどっちが大きい?
ズバリ「短期」のほうが大きいです。
一般に短期は10分程度、長期は50年程度を想定しています。
したがって、次のように考えることができます。

――――――――ポイント――――――――
■短期許容応力度 → 10分間ならその力が働いても大丈夫という限界値
■長期許容応力度 → 50年間その力が働いても大丈夫という限界値
短期許容応力度 > 長期許容応力度
――――――――――――――――――――

短い時間だったら頑張って大きな力にも耐えられるが、同じ力が長い時間かかると、へたばってしまう
わけです。

本題はここからですw

以上の基本事項を理解した上で、次の表を覚えてください。
表を覚えるために、続く図でしっかりとイメージをつかんでください。
今回のテーマは木材ですが、鉄筋・鉄骨、コンクリートもあわせて比較・整理します。
コンクリートと木材は、長期荷重時のクリープ現象があるため、長期許容応力度が低めに設定されています。

wood allowable stress 1

wood allowable stress 2

wood allowable stress 3


最後にいま一度、表と図を頭に描きながら、問題1、2、3が正しい記述であることをしっかり確認してください。

井澤ですいざわ

■問題1
含水率が繊維飽和点以下の木材において、乾燥収縮率の大小関係は、年輪の接線方向>半径方向>繊維方向である。(一級構造:平成19No.23
■問題2
木材の繊維方向の基準強度は、一般に、引張強度より圧縮強度のほうが大きい。(一級構造:平成26No.27
■問題3
木材の繊維方向の曲げ、引張り及びせん断の基準強度並びに繊維直交方向のめり込みの基準強度の大小関係は、一般に、曲げ>引張り>せん断>めり込みである。(一級構造:平成23No.27

――――――――――――――――――――――
■解答
 問題1 正。
 問題2 正。
 問題3 誤。せん断とめり込みの順番が逆である。せん断が一番小さい。
――――――――――――――――――――――

木材の大小関係について2つの頻出事項をしっかり整理しておきましょう。

―――――――――ポイント―――――――――
■乾燥収縮率の大小関係
 年輪の接線方向(円周方向) > 半径方向 > 繊維方向
繊維方向の基準強度の大小関係
 曲げ > 圧縮 > 引張 > めり込み > せん断
    ※めり込みは「繊維直交方向のめり込み」
――――――――――――――――――――――

■乾燥収縮率の大小関係について
wood expansion

繊維方向の基準強度の大小関係について
① 5つの大小関係の中でも特に注意すべき部分は次の2点である。
・圧縮>引張
・めり込み>せん断・・・せん断が最小
したがって、次のように大きく3分割して覚えると良い。
曲げ >(圧縮>引張)>(めり込み>せん断)
② 「曲げ>圧縮」について
例えば「ひのき」では、曲げの基準強度は38.4/㎟、圧縮の基準強度は30.6/㎟と定められている。
・曲げでは、断面の縁の部分に1㎟当たり38.4Nが働くと限界、
・圧縮では、全断面に均等に1㎟当たり30.6Nが働くと限界、ということ。
断面の縁の部分だけであれば、全断面に働くよりも大きな力に耐えられる。
したがって、「曲げ>圧縮」
――――――――――――――――――――――

井澤ですいざわ

■問題1
含水率が繊維飽和点以下の木材の伸縮は、含水率に概ね比例する。(一級構造:平成24No.27
■問題2
含水率が繊維飽和点以下の木材の伸縮率は、含水率が小さくなるほど小さくなる。(一級構造:平成21No.27
■問題3
木材において、構造用材料の弾性係数は、一般に、繊維飽和点以下の場合、含水率の低下に伴って減少する。(一級構造:平成27No.27
■問題4
木材は、一般に、含水率が2535%を超えると腐朽しやすくなる。(一級構造:平成19No.23

――――――――――――――――――――――
■解答
問題1 正。
問題2 正。
問題3 誤。弾性係数(ヤング係数)は硬さを表す。木材は含水率が低下すれば乾燥して硬くなり、弾性係数(ヤング係数)は大きくなる。
問題4 正。

―――――ポイント:木材の含水率――――――
■含水率が繊維飽和点以下の場合
・含水率にほぼ比例して伸縮する。(乾燥すると縮む)
・含水率が小さくなると伸縮率は小さくなる。(乾燥すると縮む)
・含水率が小さくなると強度は大きくなる。(乾燥すると強くなる)
・含水率が小さくなると弾性係数(ヤング係数)は大きくなる。(乾燥すると硬くなる)
■含水率が繊維飽和点以上の場合
・伸縮、強度ともほぼ一定。
・含水率が30%を越えると腐朽しやすくなる。
――――――――――――――――――――――
wood

含水率について、
No.304(含水率)も確認しておいてください。
http://kentikushi-blog.tac-school.co.jp/archives/47322744.html
 

井澤ですいざわ

■問題1
木造軸組工法による2階建ての建築物において、各階につき、張り間方向及びけた行方向の偏心率が0.3以下であることを確認した場合、「木造建築物の軸組の設置の基準(4分割法)」によらなくてもよい。(一級構造:平成26No.10
■問題2
木造軸組工法による2階建ての建築物において、壁率比が0.5未満であっても、各側端部分の壁量充足率が1を超えていればよい。(一級構造:平成22No.10
■問題3
木造軸組工法による2階建ての建築物において、各側端部分の壁量充足率が1以下であっても、壁率比が0.5以上であればよい。(オリジナル)

――――――――――――――――――――――
■解答
 問題1、2、3ともに正。
――――――――――――――――――――――

さっそくポイントです。

―――ポイント:木造の軸組の設置の基準―――
(1)又は(2)のどちらかを確認する。
(1)偏心率の確認
  ① 偏心率≦0.3
(2)4分割法
  ② 側端部分の壁量充足率>1
  ③ 壁率比≧0.5
――――――――――――――――――――――

木造の軸組の設置のバランスチェックは、()偏心率≦0.3を確認するか、()4分割法のどちらかによります。
4分割法は、又はのチェック。
したがって、のいずれかを満たせばOKと言えます。

――――――――――――――――――――――

②と③の式と、その意味を確認しましょう。

4 division method 1
変換すれば「存在壁量>必要壁量」であり、
側端部分の壁量が足りているのでOK。

4 division method 2
両側の側端部分の壁量の偏りが小さく、バランスが良いのでOK。

―――――――――――――――――――――
木造で4分割法によらない場合の偏心率の条件「0.3以下」について、No.329(剛性率・偏心率・塔状比)を確認しておいてください。
http://kentikushi-blog.tac-school.co.jp/archives/47688045.html
 

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