井澤です
■問題1
軟弱地盤の下部に良質な支持層のある敷地において、支持層に達する支持杭を採用する場合には負の摩擦力を考慮し、軟弱地盤中の摩擦杭を採用する場合には負の摩擦力を考慮しなくてもよい。(一級構造:平成21年No.21)
■問題2
圧密沈下のおそれのある軟弱地盤において、軟弱地盤中の摩擦杭に杭と地盤の相対変位が生じない場合には、負の摩擦力を考慮しなくてもよい。(一級構造:平成23年No.21)
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■解答
問題1、2ともに正。
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負の摩擦力(ネガティブフリクション)とは、「軟弱地盤等において、杭の周囲の地盤が沈下することにより、杭の周面に下向きに作用する摩擦力」のことです。
なぜ「負」「ネガティブ」と言うかというと、通常働く杭の周面摩擦力と逆向きに働くからです。
■通常働く杭の周面摩擦力
通常は、杭には建築物から下向きの鉛直荷重が働きますので、「杭が地盤に対して沈下」しようとします。すると、摩擦力によって、杭は地盤から「上向きの摩擦力」を受けます。特に摩擦杭では、その「上向きの摩擦力」だけで建築物を支えています。
■負の摩擦力
一方、「負の摩擦力」とは、支持杭において、支持層の上にある軟弱地盤が圧密沈下して、「地盤が杭に対して沈下」するときに生じます。
次図は「圧密層」と書いてある地層が圧密沈下した状態です。
「地盤が杭に対して沈下」すると、摩擦力によって、杭は地盤から「下向きの摩擦力」を受けるのです。これが「負の摩擦力」です。
支持杭の先端部(下部)が支持層に支えられたまま、周囲の地盤から「負の摩擦力」を受けると、杭に過大な圧縮力が働き、杭が破壊されることもあります。
この「負の摩擦力」は、「地盤が杭に対して沈下」したときに生じますので、杭と地盤の相対変位(ズレ)が生じない場合は、「負の摩擦力」は生じません。
―――――ポイント:負の摩擦力―――――
■支持杭
支持杭において、支持層の上にある軟弱地盤が圧密沈下すると、負の摩擦力が生じる。
↑支持杭が沈下しないのに地盤だけが沈下すると、負の摩擦力が生じる。
■摩擦杭
摩擦杭では、負の摩擦力が生じにくい。
↑摩擦杭と地盤が一緒に沈下すると、負の摩擦力は生じない。
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※摩擦杭には、「負」ではない、通常の摩擦力は大いに働いています。というより、その通常の「上向きの摩擦力」だけで建築物を支えています。