TAC建築士講師室ブログ

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一級製図試験

井澤ですいざわ

平成30年一級建築士試験「設計製図の試験」の課題が公表されました。
まずは公表された全文をご確認ください。

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■課題名
健康づくりのためのスポーツ施設

■要求図書
1階平面図・配置図(縮尺1/200)
2階平面図(縮尺1/200)
3階平面図(縮尺1/200)
断面図(縮尺1/200)
面積表
計画の要点等
(注1)
・健康増進のためのエクササイズ等を行う温水プールのある建築物の計画
(注2)
パッシブデザインを積極的に取り入れた建築物の計画
(注3)
・建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分の位置及び防火設備等の適切な計画
防火区画(面積区画、竪穴区画)等の適切な計画
・避難施設(直通階段の設置・直通階段に至る歩行距離、歩行経路及び重複区間の長さ、敷地内の避難上必要な通路)等の適切な計画

■建築物の計画に当たっての留意事項
・敷地の周辺環境に配慮して計画する。
・バリアフリー、省エネルギー、セキュリティ等に配慮して計画する。
・各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする。
・建築物全体が、構造耐力上、安全であるとともに、経済性に配慮して計画する。
・構造種別に応じて架構形式及びスパン割りを適切に計画するとともに、適切な断面寸法の部材を配置する。
・空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する。

■注意事項
「試験問題」及び上記の「要求図書」、「建築物の計画に当たっての留意事項」を十分に読んだうえで、「設計製図の試験」に臨むようにして下さい。
なお、設計与条件に対して解答内容が不十分な場合には、「設計条件・要求図面等に対する重大な不適合」等と判断されます。
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「要求図書の(注1~3)」、「建築物の計画に当たっての留意事項」、「注意事項」により、非常に文量の多い課題発表となりました。
主なポイントは次のとおりです。

1.類似の過去課題

 主な類似の過去課題は次のとおりです。
① 平成20年「ビジネスホテルとフィットネスクラブからなる複合施設」
 フィットネスクラブ部門に屋内プール(20m。1階又は2階)、トレーニングルーム、エアロビクススタジオ等が要求されました。
② 平成14年「屋内プールのあるコミュニティ施設」
 スポーツ施設部門にプール室(20m。2階)、トレーニングルーム、エアロビクススタジオ等が要求されました。
③ 昭和59年「健康づくりのための屋内運動施設」
 運動部門に屋内プール室(25m。1階が妥当)、トレーニング室等が要求されました。

2.プールの計画

(1)プールの大きさ
・プールの長さは25mとは限りません。
・直近2回の類似の過去課題では、プールの長さは20mです。
・要求図書(注1)の「健康増進のためのエクササイズ等を行う」という記載は、競泳用ではないので25mとは限らない、ということを意図した可能性があります。

(2)プールの設置階と断面構成
・プールは1階とは限りません。
・2階又は3階に設けることも考えられます。その場合には、水深を確保するため、下階の階高は6m程度必要になります。その際の階段の計画では、試験で多用する4m階高の階段を1.5回転として対応するのが有効です。
・プールは大スパン、高天井となるため、屋根を鉄骨梁として上階を計画しない選択や、プレストレストコンクリート造の梁を設けて上階を計画する選択等が考えられ、適切な立体構成・断面構成が求められます。

(3)プールのゾーニング・動線計画
・プールは、更衣室、ロッカールーム、他のトレーニングルーム等の室との適切なゾーニングと動線計画が求められます。

3.その他、考えられる要求室

 「健康づくりのためのスポーツ施設」として、プール以外に考えられる主な要求室として、次のようなものが考えられます。
・プール観覧用ギャラリー、プール監視室
・トレーニングルーム、エアロビクススタジオ、指導員控室、器具庫
・更衣室、シャワー室、ロッカールーム
・医務室、健康相談室
・ラウンジ、休憩室、売店(スポーツ用具販売)
・レストラン・コーヒーショップ
・その他、エントランスホール、事務室、電気・機械室等の管理部門

4.構造計画

・今年の課題発表の中では、構造計画に関して特筆すべき記載はありませんが、プールの大スパンの構造計画や、特定天井(天井高6m超、水平投影面積200㎡超等)の落下防止対策等がポイントとして挙げられます。

5.設備計画

・温水プール特有の設備としては、循環ろ過装置消毒設備などが必要となります。
・試験の採点のしやすさ等を考慮して、平成29年試験のように電気室、機械室の床面積が指定される可能性もあります。平成29年試験では空調機械室だけは床面積が「適宜」で出題されました。
・近年連続して出題されている「パッシブデザイン」が今年も求められています。
自然採光、自然通風、屋上緑化、ルーバーによる日射遮蔽、太陽熱利用、地中熱利用、クール・ヒートチューブなどを積極的に取り入れた計画が求められています。

6.防火設備等、防火区画等の適切な計画

 ・今年初めて課題発表で明記された内容として、要求図書(注3)の
「建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分の位置及び防火設備等の適切な計画」及び
防火区画(面積区画、竪穴区画)等の適切な計画」
が挙げられます。

(1)防火設備等
防火設備とは、防火戸(扉、網入りガラス窓、防火シャッター等)、防火ダンパー等をいいます。
・3階以上の階を水泳場又はスポーツの練習場とする今年の課題は、耐火建築物で計画するのが適切です(特定避難時間倒壊等防止建築物等も可能ではありますが)。(法27条1項)
・耐火建築物の「外壁の開口部で延焼のおそれのある部分(隣地境界線、道路中心線等から1階で3m以下、2階以上で5m以下の部分。ただし、防火上有効な公園等に面する部分を除く)」には、20分間の遮炎性能をもつ防火設備が求められます。(法2条九号の二ロ)
「延焼のおそれのある部分(延焼ライン)」の図示や、防火設備の明記が求められること等が考えられます。

(2)防火区画
主要構造部を耐火構造とした建築物は、原則として床面積の合計1,500㎡以内ごとに面積区画が必要です。(令112条1項)
また、3階建てでは吹抜け、階段、EV等の部分は、原則として竪穴区画が必要です。

7.「建築物の計画に当たっての留意事項」と「注意事項」

(1)建築物の計画に当たっての留意事項
6項目からなる「建築物の計画に当たっての留意事項」は、例年試験当日の問題用紙の中に記載されるものであり、課題発表の時点で明記されるのは初めてのことです。
6項目の内容はほぼ例年どおりの内容ですが、「省エネルギー」が明記されたのは今年が初めてです。
採点にも大きく関わる非常に大事な内容ではありますが、抽象的であり、例年ほぼ同じ内容が繰り返されていました。

(2)注意事項
「注意事項」が明記されたのは今年が初めてです。
あらためて「注意事項」を確認すると次のとおりです。
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①「試験問題」及び上記の「要求図書」、「建築物の計画に当たっての留意事項」を十分に読んだうえで、「設計製図の試験」に臨むようにして下さい。
②なお、設計与条件に対して解答内容が不十分な場合には、「設計条件・要求図面等に対する重大な不適合」等と判断されます。
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 ①の部分を良く読むと、試験当日の「試験問題」と、本日発表された「要求図書」と「建築物の計画に当たっての留意事項」を十分に読んだうえで、試験に臨むように、と書いてあります。
 ここから推測されることとして、「建築物の計画に当たっての留意事項」については、試験当日の「試験問題」にはあらためて書かれない可能性があります。
これは、長文化している「試験問題」において、記載内容を減らし、平成29年試験のように敷地図を問題用紙とは別紙に掲載するのを避ける目的もあるように思います。
 ②については、設計与条件に従った計画を強く求めています。設計製図試験の鉄則です。
 あらためて注意事項で記載された意図は、平成29年試験のリゾートホテルで「全ての客室は、名峰や湖の眺望に配慮する。」という設計与条件に対して、多くの受験生がそれに反した計画をして不合格になったということが起きないように注意喚起をしていると思われます。


以上、発表課題から考えられる主なポイントは以上になります。

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■課題の概要説明会のご案内
TACでは下記の日程で、一級建築士 設計製図試験「課題の概要説明会」を実施します。
 7/26(木)渋谷校19:00~20:30
 7/28(土)横浜校11:00~12:30
 7/29(日)新宿校・池袋校・八重洲校・町田校・札幌校・名古屋校・梅田校14:00~15:30
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■学科試験を受験される方へ
最後に、明後日学科試験を受験される方へ
もう少しで学科試験から解放されます!
最後の最後まで1点のために頑張ってください。
皆様の合格を心から祈っています!






◆ 10/12の建築士設計製図の試験について(10月12日7時現在)

 沖縄県の沖縄職業能力開発大学校における一級建築士及び木造建築士の設計製図の試験が、台風19号による交通機関等への影響により、中止になりました。

詳細は、下記のホームページをご確認ください。

建築技術教育普及センターのホームページ
 



 

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