TAC建築士講師室ブログ

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低減

井澤ですいざわ

■問題1
鉄骨構造において、圧縮材の許容圧縮応力度は、その材の有効細長比が大きくなるほど小さくなる。(一級構造:平成16No.15
■問題2
鉄骨鉄筋コンクリート構造の柱の設計において、コンクリートの許容圧縮応力度は、一般に、圧縮側鉄骨比に応じて低減させる。(一級構造:平成22No.19
■問題3
鉄骨造の「耐震計算ルート1」において、プレス成形角形鋼管(BCP材)の柱材に対し、地震力による柱応力の割増しを行い、許容応力度計算を行った。(一級構造:平成23No.18
■問題4
高さ15mの鉄骨造の建築物を耐震計算ルート2で設計する場合、筋かいの水平力分担率を100%とすると、地震時の応力を1.5倍以上として設計する。(一級構造:平成18No.16


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■解答
 問題1~4まですべて正。
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低減?割増?という方も多いのではないでしょうか?

許容応力度計算(耐震計算ルート1)では、次のことを確認します。
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 応力度 ≦ 許容応力度
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そんなの分かっている、と言われそうですが、では、問題1から4までの記述は、左辺の「応力度」のことか、右辺の「許容応力度」のことか、分かっていますか?

―――――――――ポイント―――――――――
問題1と2は、右辺の「許容応力度」の低減、
問題3と4は、左辺の「応力度」の割増しです。
どちらも厳しく規制されているのです。
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① 
右辺の「許容応力度」の低減
「許容応力度」が低減されれば、部材に生じる「応力度」を低く抑えなければなりません。

② 
左辺の「応力度」の割増し
応力度は(応力/断面積)ですから、問題3、4の「応力」の割増しは、「応力度」の割増しと同じです。
部材に生じる「応力度」を割増しした場合でも「許容応力度」以下としなければならないならば、①と同様に、部材に生じる「応力度」を低く抑えなければなりません。

したがって、①も②も、どちらも厳しく規制されているのです。
①「許容応力度の低減」で厳しくするのか、②「応力度を割増し」で厳しくするのか、どっちなのかを覚える必要はありません。どちらも厳しく規制されていることが分かれば良いです。

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厳しく規制される理由は次のとおりです。

■問題1 S造で細長比が大きくなると(=細長くなると)
座屈するおそれがあるため、許容圧縮応力度を低減します。
■問題2 SRC造で圧縮側鉄骨比が大きいと(=圧縮側鉄骨断面積が大きいと)コンクリートの充填性が低下するため、許容圧縮応力度を低減します。
■問題3 冷間成形角形鋼管(BCP・BCR)は、角形に成形する際に一部をすでに塑性化させており、塑性変形能力が低下していますので、応力度を割増しします。
■問題4 S造で筋かいの水平力分担率が大きくなると、脆性破壊のおそれがあるため、応力度を割増しします。なお、割増し係数は次のとおりです。

ポイント:鉄骨造の地震時応力の割増し(耐震計算ルート2)

筋かいの水平力分担率β

割増し係数

β≦5/7(約71%)

1+0.7β

β>5/

1.5

ポイント1:β≦5/7でも、βに応じて割増しがある。
ポイント2:β>5/7では、一律1.5倍の割増し。 

井澤ですいざわ

■問題1
単位床面積当たりの積載荷重の大小関係は、実況に応じて計算しない場合、「床の構造計算をする場合」>「大ばり、柱又は基礎の構造計算をする場合」>「地震力を計算する場合」である。(一級構造:平成18No.8)
■問題2
事務室の柱の垂直荷重による圧縮力を計算する場合において、ささえる床の数に応じて、積載荷重を低減することができる。(一級構造:平成19No.8)
■問題3
劇場の柱の垂直荷重による圧縮力を計算する場合において、ささえる床の数に応じて、積載荷重を低減することができる。(一級法規:平成23No.12改)

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■解答
 問題1、2 正。
 問題3 誤。劇場の場合、ささえる床の数による積載荷重の低減はない。
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積載荷重
は、人間、家具など、移動可能なものの重さによる荷重です。
積載荷重の特徴は、分布に偏りが生じることです。
そこで、分布の偏りを考慮して、次の3つの計算において、それぞれ異なる値が定められています。

(1)積載荷重と構造計算の種類

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① 床の構造計算用
床の構造計算をする場合は、積載荷重が最も集中した最大値でも床が抜けないようにするため、積載荷重の値は最大値になります。
② 大ばり・柱・基礎の構造計算用
上図で考えると左手前の柱は、床の左手前1/4の積載荷重を負担します。床の1/4全体が積載荷重の最大値になっていることは考えにくく、床の1/4で積載荷重が平均化されると、積載荷重の値は小さくなります。
③ 地震力の構造計算用
地震力は床全体の重量にかかります。床全体でみると、積載荷重はさらに平均化されるので、積載荷重の値はさらに小さくなります。


(2)柱がささえる床の数による積載荷重の低減

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① 一般の場合(劇場、映画館等以外)
考え方は(1)と同じです。
ささえる床の数が多くなると、その分、積載荷重が平均化され、偏りが小さくなるので、積載荷重を低減することができます。
(注意)
ささえる床の数が多くなると低減率は小さくなりますが、決して積載荷重が小さくなるということではありません。上図下段のとおり、1階柱の積載荷重は、2階柱の積載荷重よりも大きくなります。
② 劇場、映画館等の場合
劇場、映画館等では、「ささえる床の数による積載荷重の低減」はありません。
劇場、映画館等では全階満員で、平均化しても積載荷重の値が小さくならない場合があるからです。

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