井澤です
今回のテーマは木材の許容応力度ですが、鉄筋、鉄骨、コンクリートの許容応力度についても比較・整理します。とても大事な内容です。
■問題1
木材の繊維方向の短期許容応力度は、積雪時の構造計算をする場合を除いて、基準強度の2/3である。(一級構造:平成25年No.27)
■問題2
木材の繊維方向の短期許容応力度は、積雪時の構造計算以外の場合、長期許容応力度の2/1.1倍とされている。(一級構造:平成16年No.22)
■問題3
木材の繊維方向の長期許容応力度は、積雪時の構造計算以外の場合、木材の繊維方向の基準強度の1.1/3倍の数値とする。(一級構造:平成20年No.23改)
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■解答
問題1、2、3ともに正。
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問題1は、短期が基準強度の何倍か、
問題2は、短期が長期の何倍か、
問題3は、長期が基準強度の何倍か、
を問う問題です。とても厄介ですね。
数値の丸暗記は難しいので、表で整理し、図でイメージをつかむことが大事です。
まずは基本事項を3つ理解してください。
1.許容応力度とは
許容応力度とは、部材に生じる応力度(力/断面積)について、安全に余裕を見て許容できる限界値をいいます。
許容応力度には、短期と長期があります。
2.許容応力度と基準強度の関係
これについてはNo.281(基準強度・設計基準強度)を参照してください。
http://kentikushi-blog.tac-school.co.jp/archives/46850810.html
3.短期許容応力度と長期許容応力度はどっちが大きい?
ズバリ「短期」のほうが大きいです。
一般に短期は10分程度、長期は50年程度を想定しています。
したがって、次のように考えることができます。
――――――――ポイント――――――――
■短期許容応力度 → 10分間ならその力が働いても大丈夫という限界値
■長期許容応力度 → 50年間その力が働いても大丈夫という限界値
短期許容応力度 > 長期許容応力度
――――――――――――――――――――
短い時間だったら頑張って大きな力にも耐えられるが、同じ力が長い時間かかると、へたばってしまうわけです。
本題はここからですw
以上の基本事項を理解した上で、次の表を覚えてください。
表を覚えるために、続く図でしっかりとイメージをつかんでください。
今回のテーマは木材ですが、鉄筋・鉄骨、コンクリートもあわせて比較・整理します。
コンクリートと木材は、長期荷重時のクリープ現象があるため、長期許容応力度が低めに設定されています。
最後にいま一度、表と図を頭に描きながら、問題1、2、3が正しい記述であることをしっかり確認してください。
基準強度
井澤式 建築士試験 比較暗記法 No.387(木材の乾燥収縮率・基準強度の大小関係)
井澤です
■問題1
含水率が繊維飽和点以下の木材において、乾燥収縮率の大小関係は、年輪の接線方向>半径方向>繊維方向である。(一級構造:平成19年No.23)
■問題2
木材の繊維方向の基準強度は、一般に、引張強度より圧縮強度のほうが大きい。(一級構造:平成26年No.27)
■問題3
木材の繊維方向の曲げ、引張り及びせん断の基準強度並びに繊維直交方向のめり込みの基準強度の大小関係は、一般に、曲げ>引張り>せん断>めり込みである。(一級構造:平成23年No.27)
――――――――――――――――――――――
■解答
問題1 正。
問題2 正。
問題3 誤。せん断とめり込みの順番が逆である。せん断が一番小さい。
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木材の大小関係について2つの頻出事項をしっかり整理しておきましょう。
―――――――――ポイント―――――――――
■乾燥収縮率の大小関係
年輪の接線方向(円周方向) > 半径方向 >
繊維方向
■繊維方向の基準強度の大小関係
曲げ > 圧縮
> 引張 > めり込み > せん断
※めり込みは「繊維直交方向のめり込み」
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■乾燥収縮率の大小関係について
■繊維方向の基準強度の大小関係について
① 5つの大小関係の中でも特に注意すべき部分は次の2点である。
・圧縮>引張
・めり込み>せん断・・・せん断が最小
したがって、次のように大きく3分割して覚えると良い。
曲げ >(圧縮>引張)>(めり込み>せん断)
② 「曲げ>圧縮」について
例えば「ひのき」では、曲げの基準強度は38.4N/㎟、圧縮の基準強度は30.6N/㎟と定められている。
・曲げでは、断面の縁の部分に1㎟当たり38.4Nが働くと限界、
・圧縮では、全断面に均等に1㎟当たり30.6Nが働くと限界、ということ。
断面の縁の部分だけであれば、全断面に働くよりも大きな力に耐えられる。
したがって、「曲げ>圧縮」
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井澤式 建築士試験 比較暗記法 No.362(TMCP鋼)
井澤です
■問題1
建築構造用TMCP鋼は、同じ降伏点のSN材やSM材に比べて炭素当量が低減されているので、溶接性が向上している。(一級構造:平成20年No.25)
■問題2
建築構造用TMCP鋼の基準強度は、厚さが40㎜を超え、100㎜以下の厚鋼板の場合においても、厚さが40㎜以下の場合と同じである。(オリジナル予想問題)
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■解答
問題1、2ともに正。
問題2はオリジナル予想問題です。
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No.355(鋼材の板厚と降伏点・引張強さ)では、次のことを学びました。
「板厚が40mmを超えると(=板厚が厚くなると)、熱処理時の冷却にムラができやすく、降伏点が低下する。 鋼材は降伏点を基準強度としているので、一般に、板厚が40mmを超えると、基準強度は小さくなる。」
http://kentikushi-blog.tac-school.co.jp/archives/48182360.html
今回はこれと関連する内容です。
TMCP鋼とは、Thermo Mechanical Control Process(熱加工制御)の略で、製造過程での熱処理時の温度を制御することにより冷却にムラがなくなるため、板厚が40㎜を超える場合でも基準強度の低減が不要です。
問題1は過去問です。
一般に、鋼材は約0.8%までは炭素量が多くなると、強度は大きくなりますが、脆くなり、溶接性も低下します。
TMCP鋼は、高度な熱加工制御により炭素量が少なくても強度が大きく、溶接性も向上しています。
問題2はオリジナル予想問題です。
TMCP鋼に関する問題1の溶接性も大事な内容ですが、それに勝るとも劣らない重要なポイントが、「厚鋼板でも基準強度の低減が不要」という点ですから、ぜひ覚えておいてください。
――――――ポイント:TMCP鋼――――――
■TMCP鋼
・板厚が40mmを超える厚鋼板でも基準強度の低減が不要。
■一般の鋼材
・板厚が40mmを超えると、熱処理時の冷却にムラができやすく基準強度が小さくなる。
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井澤式 建築士試験 比較暗記法 No.354(オフセット耐力)
井澤です
TACでは今週末から一級建築士設計製図コースが開講になります。
教室も教材作成も設計製図一色となっていますが、「井澤式 建築士試験 比較暗記法」では、来年の学科試験合格のために、引き続いて「構造」のポイントを扱っていきます。
今年、学科試験が残念な結果だった方には、もう少しの間、試験のことは忘れてゆっくりされるのも良いことだと思いますが、このブログが、せっかく身に付けた知識を忘れないようにするきっかけになればと思っています。
ありがたいことに「合格した後も見ています」と言ってくれる方もいらっしゃいます。
それでは問題です。
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■問題1
鉄筋コンクリート用棒鋼SD345の「降伏点又は0.2%オフセット耐力」は、345~440N/㎟である。(一級構造:平成15年No.24)
■問題2
建築構造用ステンレス鋼材SUS 304 Aは、降伏点が明確でないので、その基準強度については、0.1%オフセット耐力を採用している。(一級構造:平成15年No.24)
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■解答
問題1、2ともに正。
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鉄筋SD345の数値は、原則として、降伏点の下限値です。これが基準強度になります。
この辺りの詳細についてはNo.340(SN400B・SD345の数値の意味)を参照してください。
http://kentikushi-blog.tac-school.co.jp/archives/47848865.html
それでは、降伏点が明確に現れない場合は、どのような値を基準強度とするか?
図のSUS304は降伏点が明確に現れておらず、応力度-ひずみ度曲線がなだらかな曲線になっています。
こういうときに使うのが「オフセット耐力」です。
オフセットとは、ここでは「ズレ」の意味で使われています。図の曲線の原点と点線がズレていますね。
「0.1%オフセット耐力」とは、永久ひずみが0.1%となるときの応力度をいいます。
図の場合、「0.1%オフセット耐力」は約270N/㎟です。この力をかけると、力を取り除いても0.1%の永久ひずみが残ります。
この値の下限値(235N/㎟)がSUS304の基準強度になります。
同様に「0.2%オフセット耐力」とは、永久ひずみが0.2%となるときの応力度をいいます。
試験対策上、次の内容を比較整理して覚えておきましょう。
―――――ポイント:オフセット耐力―――――
■ステンレスの基準強度
0.1%オフセット耐力
■鉄筋の基準強度
降伏点 又は 0.2%オフセット耐力
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井澤式 建築士試験 比較暗記法 No.340(SN400B・SD345の数値の意味)
井澤です
■問題1
建築構造用圧延鋼材SN400Bの引張強さの下限値は、400N/㎟である。(一級構造:平成27年No.29改)
■問題2
鉄筋コンクリート用棒鋼SD345の降伏点又は耐力の下限値は、345N/㎟である。(一級構造:平成27年No.29)
■問題3
(一社)日本鉄鋼連盟製品規定「建築構造用冷間プレス成形角形鋼管」に適合するBCP235材の降伏点又は耐力の下限値は、235N/㎟である。(一級構造:平成20年No.25)
■問題4
建築構造用ステンレス鋼材に定めるSUS304Aの基準強度は、板厚が40㎜以下のSN400Bと同じである。(一級構造:平成23年No.29)
■問題5
建築構造用ステンレス鋼材SUS304Aは、降伏点が明確ではないので、0.1%オフセット耐力を基に基準強度を定めている。(一級構造:平成25年No.29)
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■解答 すべて正。
問題1、2は基本問題、問題3、4は発展問題と言えるでしょう。
問題5は関連として一緒に覚えておきましょう。
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■基本
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数値の意味 |
鋼材 |
SN400 |
400は引張強さの下限値 |
鉄筋 |
SD345 |
345は降伏点の下限値 |
・鋼材のように「引張強さ」で表すのが基本的な考え方と言えます。
・鉄筋は、鉄筋コンクリートの材料として使用されます。降伏点を超え伸びが大きくなるとコンクリートとズレが生じ、用をなさなくなるので「降伏点」で表します。
■発展
鋼材についての発展的な内容として、次の内容も覚えておきましょう。
鋼材は「引張強さ」で表すのが基本ですが、次のように例外があります。
・冷間成形角形鋼管(BCP:ボックスコラムプレス/BCR:ボックスコラムロール)は「降伏点」で表します。これは、角形に成形する際に一部をすでに塑性化させており、すでに降伏させているから、と考えてください。
・SUS304の304は成分を表す記号であり、強度はまったく関係ありません。
そして次表の鋼材はすべて基準強度(=降伏点強度)が235N/㎟で、まったく同じです。
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数値の意味 |
基準強度 |
SN400 |
400は引張強さの下限値 |
235N/㎟ |
BCP235 |
235は降伏点の下限値 |
235N/㎟ |
SUS304 |
304は成分を表す記号 |
235N/㎟ |
※SN400について
板厚が40mmを超える場合の基準強度は215N/㎟。板厚が厚くなると熱処理時の冷却にムラができやすく、降伏点が低下するため基準強度は小さくなる。