TAC建築士講師室ブログ

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幅厚比

こんにちはセイタです
せいた

二級建築士の試験のポイントをご紹介する「動画de2級建築士」、第7回目です。

今回は構造の科目の中で、鉄骨造、木構造についてです

 

<今週の前半>構造:鉄骨造(局部座屈と幅厚比の制限)

二級建築士では、鉄骨造については毎年2問出題されています。

局部座屈、横座屈など紛らわしい用語が出てくるので、区別して覚えましょう。

 

Pointは、

①局部座屈とは何か?を理解する。

②部材が「薄っぺらい」ほど、局部座屈を生じやすい

③局部座屈、横座屈を混同しない!

●局部座屈の抑制 → 幅厚比を小さく。

 ●横座屈の抑制 → 横補剛材(小梁)を入れる。

 

構造第6回20
https://youtu.be/-DDicmEk8bw
 

<過去の本試験では>

①H形鋼は、板要素の幅厚比が小さいものほど、局部座屈が生じやすい。

②梁の横座屈を防止するために、板要素の幅厚比が制限されている。

 

 

①誤→幅厚比は大きいほど座屈しやすい。

②誤→横座屈の防止には、横補剛材(小梁)を入れる。

 

 

<今週の後半>構造:木構造(接合部)

二級建築士では、木構造については毎年3問出題されています。

接合部の種類はいろいろありますが、今回は釘接合について。

Pointは、

①許容せん断耐力は、釘の長さに関係しない。

②許容引抜き耐力は、釘の長さに関係する。

(引抜きは釘と木との摩擦力が関係する。釘が長いほど摩擦力が大)

 

構造第7回20
https://youtu.be/NGFspcmqBvw

<過去の本試験では>

①釘接合部における釘の許容引抜耐力は、木材の気乾比重、釘の胴部径及び釘の打ち込まれる長さ等に影響される。

②引張材の端部接合部において、加力方向に釘を一列に10本以上並べて打ち付ける場合、釘接合部の許容せん断耐力を低減する。

 

①正

②正






井澤ですいざわ

■問題1
鉄骨構造において、梁に使用する材料をSN400BからSN490Bに変更したので、幅厚比の制限値を大きくした。(一級構造:平成26No.17
■問題2
H形断面梁の変形能力の確保において、梁の長さ、断面の形状・寸法が同じであれば、等間隔に設置する横補剛の必要箇所数は、梁材が「SN490材の場合」より「SS400材の場合」のほうが少ない。(一級構造:平成22年No.15

――――――――――――――――――――――
■解答
 問題1 誤。強度を大きくすると、幅厚比の制限値は小さくしなければならない。つまり、フランジやウェブを分厚くしなければならない。
 問題2 正。
――――――――――――――――――――――

No.358
(「強度」と「たわみ・断面寸法」)では、鉄骨の梁について次のことを学習しました。

―――ポイント:強度とたわみ・断面寸法―――
強度を大きくすると
■たわみは小さくできない。
■断面寸法(梁せい)は小さくできる。
――――――――――――――――――――――
http://kentikushi-blog.tac-school.co.jp/archives/48247872.html

今回は、前者の「強度を大きくしても、たわみは小さくできない」という内容と大いに関連する内容です。

はじめに幅厚比と横補剛材の用語を確認しましょう。

■幅厚比
幅厚比とは、フランジ、ウェブなどの個々の板要素の「幅/厚」です。
幅厚比(幅/厚)が大きいほど、薄っぺらくなります。
幅厚比(幅/厚)が小さいほど、分厚くなります。

■横補剛材
横補剛材とは、横座屈を防ぐために横から支える部材で、大梁に対する小梁がその役割を担います。

次にポイントを確認しましょう。

――ポイント:強度と幅厚比・横補剛材の数――
強度を大きくすると
・幅厚比を小さくしなければならない。
・横補剛材の数を多くしなければならない。
――――――――――――――――――――――

■分かりやすく言うと次のようになります。
SN400B材の代わりにSN490B材を用いるなど、
・強度の大きい材料を用いた梁のほうが、フランジやウェブを分厚くしなければならない。
・強度の大きい材料を用いた梁のほうが、小梁の数を多くしなければならない。

おそらく直感とは逆なのではないかと思います。
これは「鋼材は強度を大きくしてもヤング係数Eは変わらない」という性質に因ります。
みんなが間違えやすいところですし、だからこそ頻繁に出題されるのです。

――――――――――――――――――――――
■理由は次のとおりです。
・強度の大きい部材は、大きい力を負担するように設計します。
・鋼材は強度を大きくしてもヤング係数Eは変わらないので、大きい力を負担すると、大きい変形が生じます。ここがポイントです!
・変形には局部座屈や横座屈などがあります。
・強度の大きい部材が大きい力を負担すると局部座屈が生じやすくなるので、幅厚比を小さくしなければなりません。(フランジやウェブを分厚くしなければなりません。)
・強度の大きい部材が大きい力を負担すると横座屈が生じやすくなるので、横補剛材の数を多くしなければなりません。(小梁の数を多くしなければなりません。)
――――――――――――――――――――――
 

最後に、今回のポイントをNo.358と一緒にしてまとめると、次のようになります。
――――――ポイント:鉄骨造の梁――――――
強度を大きくすると
■たわみは小さくできない。
■断面寸法(梁せい)は小さくできる。
■幅厚比を小さくしなければならない。
■横補剛材の数を多くしなければならない。
――――――――――――――――――――――

※幅厚比については
No.352(降伏比・幅厚比・細長比)も参考にしてください。
http://kentikushi-blog.tac-school.co.jp/archives/48056449.html

井澤ですいざわ

■問題1
降伏比の小さい鋼材を用いた鉄骨部材は、一般に、塑性変形能力が小さい。(一級構造:平成26年No.29
■問題2
鉄骨構造のラーメン構造において、靱性を高めるために、塑性化が予想される柱又は梁については、幅厚比の大きい部材を用いる。(一級構造:平成25年No.16
■問題3
有効細長比λが小さい筋かい(λ=20程度)は、有効細長比λが中程度の筋かい(λ=80程度)に比べて変形性能が高い。(一級構造:平成22年No.16

――――――――――――――――――――――
■解答
 問題1 誤。
 問題2 誤。
 問題3 正。
――――――――――――――――――――――

さっそくポイントを確認しましょう。

―――――――――ポイント―――――――――
鉄骨構造で出てくる次の3つの「比」は、
すべて小さいほど塑性変形能力が高い。
降伏比
幅厚比
細長比
――――――――――――――――――――――
3つの「比」を覚える語呂合わせ
「幸   福  は細く長く」
 降伏比 幅厚比 細長比
―――――――――――――――――――――

それでは、それぞれ少しだけ詳しく説明しましょう。

■降伏比
降伏比(降伏強度/引張強度)が小さいほど、降伏してから最大強度(=引張強度)までの余裕があり、塑性変形能力が大きくなります。
■幅厚比
幅厚比(幅/厚)が小さいほど、薄っぺらくなくなり(ピンと来なかったら絵を描いて!)、局部座屈が生じにくくなり、塑性変形能力が大きくなります。
■細長比
細長比(座屈長さ/断面二次半径)は、文字通り、細長さを表すので、細長比が小さいほど、細長くなくなります。すると、座屈が生じにくくなり、塑性変形能力が大きくなります。(座屈は抵抗力が急激に低減します。
――――――――――――――――――――――

塑性変形能力についても確認しておきましょう。
―――――――――ポイント―――――――――
「靱性が高い」=「粘り強い」=「塑性変形能力が高い」=「変形能力が高い」
すべて、同じ意味です。
すべて、降伏後に抵抗力が急激に低減することなく、塑性域でも変形し続ける能力が高い、という意味です。
――――――――――――――――――――――

ついでに次のことも確認しておきましょう。
―――――――――ポイント―――――――――
一般に、AB比と言えば、A/Bです。
・幅厚比は、幅/厚
・径厚比は、径/厚(鋼管の場合)
・水セメント比は、水/セメント(質量比)
・セメント水比は、セメント/水(質量比)
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