TAC建築士講師室ブログ

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引張強さ

井澤ですいざわ

前回の復習です。

■問題1
F8T相当のM20の溶融亜鉛めっき高力ボルトの孔径については、FlOTのM20の高力ボルトの最大孔径より1.0mm大きくした。(一級施工:平成19No.14
■問題2
高力ボルトF10Tのせん断強さの下限値は、1,000N/㎟である。(一級構造:平成27年No.29

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■解答
 問題1 誤。どちらもM20で径が20㎜なので、最大孔径は22㎜で同じ。
 問題2 誤。「せん断強さ」の下限値ではなく、「引張強さ」の下限値。
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高力ボルトの
最大孔径(孔の径)は、高力ボルトの径(軸の径)によって変わります。
大事なので、前回№365の表を再掲します。

bolt pit size

高力ボルトの
最大孔径は、高力ボルトの径のみによって決まり、
・高力ボルトの引張強さには関係しません。
 したがって、F8TかF10Tかは関係しません。
・溶融亜鉛めっき高力ボルトか、高力ボルトかも関係しません。

したがって、問題1の前者の「F8T相当のM
20の溶融亜鉛めっき高力ボルト」の最大孔径は、径dが20㎜なので、d+2㎜=22㎜です。
問題1の後者の「F10TのM20の高力ボルト」の最大孔径も、径dが20㎜なので、d+2㎜=22㎜です。
つまり、問題1の前者も後者も最大孔径は同じです。
よって、前者の孔径を後者の最大孔径より1.0mm大きくした、という問題1は誤りです。

ポイント
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「F10TのM20の高力ボルト」の数値の意味
10・・・引張強さの下限値が1,000/
20・・・高力ボルトの径
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井澤ですいざわ

■問題1
鋼材の引張強さは、一般に、250300℃付近で最大となり、これを超えると温度の上昇とともに低下する。(一級構造:平成8年No.25
■問題2
鋼材の温度上昇に伴って、降伏点が常温時の2/3まで低下する温度は、一般構造用圧延鋼材(SS材)では約350℃であり、耐火鋼(FR鋼)では600℃以上である。(一級構造:平成7年No.25
■問題3
建築構造用耐火鋼(FR鋼)は、高温時の耐火性に優れており、600℃における降伏点が常温規格値の2/3以上あることを保証した鋼材である。(一級構造:平成21No.29


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■解答
 問題1、2、3ともに正
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さっそくポイントを確認しましょう。


ポイント:鋼材の温度と引張強さ・降伏点
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■引張強さ
 鋼材の引張強さは、250300℃付近で最大となり、
 これを超えると温度の上昇とともに急激に低下する。

■一般構造用圧延鋼材(SS材)の降伏点
 約350℃降伏点が常温時の2/3まで低下

■耐火鋼(FR鋼Fire Resistant Steelの降伏点

 約600降伏点が常温時の2/3まで低下
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 temperature

井澤ですいざわ

■問題1
SN490材の許容引張応力度は、板厚による影響を受けないので、板厚25㎜と50㎜とでは同じ値である。(一級構造:平成21No.15
■問題2
同じ鋼塊から圧延された鋼材の降伏点は、一般に、「板厚の薄いもの」より「板厚の厚いもの」のほうが高くなる。(一級構造:平成22No.29
■問題3
SN490Bについては、降伏点又は耐力は板厚が40mmを超えると低下するが、引張強さは板厚が100mm以下まで同じである。(一級構造:平成18No.25


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■解答
 問題1、2ともに誤。
 板厚が40mmを超えると、製造過程で冷却にむらができやすく、降伏点が低下する。鋼材は降伏点を基準強度としており、それに基づく許容応力度も小さくなる。
 問題3 正。
 なお、設問の中で「板厚が
100mm以下まで」と書いてあるのは、JIS G3136(建築構造用圧延鋼材)に板厚100㎜以下までしか規定されていないからです。
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さっそくポイントを確認しましょう。

ポイント 鋼材の板厚と降伏点・引張強さ――
■降伏点
 板厚が40mmを超えると(=板厚が厚くなると)、熱処理時の冷却にムラができやすく、降伏点が低下する。
■引張強さ
 引張強さは、板厚にかかわらず同じ。
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