TAC建築士講師室ブログ

TAC建築士講座の講師・スタッフのブログです。

沈下量

井澤ですいざわ

■問題1
上部構造に障害が生じる基礎の不同沈下を防止するため、異種の基礎の併用は、避けることが望ましい。
(一級構造:平成16No.25
■問題2
直接基礎と杭基礎を併用する場合には、それぞれの基礎の鉛直・水平方向の支持特性と変形特性を適切に評価する。
(一級構造:平成21No.23
■問題3
パイルド・ラフト基礎とは、直接基礎と杭基礎を併用した基礎形式であり、荷重に対して直接基礎と杭基礎が複合して抵抗するものである。
(一級構造:平成19No.18
■問題4
直接基礎と杭基礎を併用した基礎形式であるパイルド・ラフト基礎は、直接基礎として十分な支持力はあるが沈下が過大となる場合等に採用されることがある。
(一級構造:平成26No.23
■問題5
直接基礎と杭基礎が複合して上部構造を支えるパイルド・ラフト基礎は、基礎の平均沈下量及び不同沈下量の低減に効果がある。
(一級構造:平成27No.20

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■解答
問題1~5まで、すべて正
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建築基準法施行令
38条では、次のように規定されています。
2項 建築物には、異なる構造方法による基礎を併用してはならない。
4項 前2項の規定は、建築物の基礎について国土交通大臣が定める基準に従った構造計算によって構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、適用しない。

問題1は、令
38条2項による「異種基礎の併用禁止」の原則論についての問題です。
問題2~5は、令38条4項に基づく「パイルド・ラフト基礎」についての問題です。

前回
No.406学習したように、杭基礎では、地盤沈下により基礎スラブ底面と地盤との間に隙間が生じることがあるため、杭基礎の鉛直支持力は、杭だけで負担し、「基礎スラブ底面の地盤の鉛直支持力」を加算しないのが一般的です。

これに対して「パイルド・ラフト基礎」は、直接基礎である「
べた基礎」と「摩擦杭」を併用し、「べた基礎」の底面にも鉛直支持力を負担させます。
むしろ「べた基礎」で鉛直支持力のほとんどを負担し、「摩擦杭」には沈下量を低減させる役割を担わせるのが一般的です。

問題2にあるように、それぞれの基礎の鉛直・水平方向の支持特性と変形特性を適切に評価し、建築物と地盤を一体とし解析を行う必要があります。

―――ポイント:パイルド・ラフト基礎――――
① 直接基礎(べた基礎)と杭基礎(摩擦杭)を併用した基礎形式。
② 基礎の沈下量の低減に効果がある。
③ 直接基礎(べた基礎)で鉛直支持力のほとんどを負担し、杭基礎(摩擦杭)には沈下量を低減させる役割を担わせるのが一般的。
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なお、「パイルド・ラフト」は、杭で支持された(
Piled)直接基礎(Raft)という意味です。
プロレス技は「パイル・ドライバー(Pile Driver:脳天杭打ち)」ですが、「パイル・ドラフト」ではありません。

井澤ですいざわ

■問題1
群杭基礎の場合、通常、その水平耐力は、各杭を単杭とみなしたときの水平耐力の総和よりも小さい値となる。(一級構造:平成6年No.19
■問題2
群杭の引抜き抵抗力は、「群杭全体を包絡するブロックとしての抵抗力」と「各単杭の引抜き抵抗力の合計」のうち、大きいほうの値とする。(一級構造:平成19No.18
■問題3
1本当たりの鉛直荷重が等しい場合、群杭の沈下量は、一般に、単杭の沈下量に比べて小さい。(一級構造:平成17No.19

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■解答
問題1 正。n本の杭からなる群杭の水平耐力は、単杭の水平耐力のn倍よりも小さい。
問題2 誤。「小さいほうの値」とする。一般に、n本の杭からなる群杭の引抜き抵抗力は、単杭の引抜き抵抗力のn倍よりも小さい。
問題3 誤。群杭は、応力伝達範囲が大きくなり、沈下量が大きい。
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「群杭」
とは、杭が密集しているため、杭の支持力、抵抗、変位、変形に対して杭相互の影響を受ける複数の杭をいいます。
一方、杭の間隔が広く、周りの杭の影響を受けない杭を「単杭」といいます。

■群杭の支持力、抵抗
群杭は、全体が一つのブロックとして挙動します。
群杭の中央部分の地盤は群杭と一体になって挙動しますので、その部分の地盤の支持力、抵抗はあまり期待できません。
したがって、n本の杭からなる群杭の支持力、抵抗は、単杭のn倍よりも小さくなります。
したがって、問題1の「水平耐力」、問題2の「引抜き抵抗力」は、一般に、群杭のほうが小さくなります。

■群杭の沈下量
沈下量について、群杭は、全体が一つのブロックとして挙動しますので、底面積が大きな基礎と同様に、圧縮力が及ぶ応力伝達範囲が大きくなり、地盤の沈下量が大きくなります。
次図は、平板載荷試験に関して、直径30cmの載荷板と、実際の基礎では圧縮応力が及ぶ「応力伝達範囲」が異なることを示す図ですが、この「応力伝達範囲」で沈下が起こるわけですから、底面積が大きな基礎と同様に、群杭の沈下量が大きくなることが分かると思います。
internal force zone

―――ポイント:群杭――――――――――――
群杭は
■支持力、抵抗 → 小さくなる。
■沈下量    → 大きくなる。
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