TAC建築士講師室ブログ

TAC建築士講座の講師・スタッフのブログです。

積載荷重

井澤ですいざわ

■問題1
建築物の地下部分の各部分に作用する地震力は、一般に、当該部分の固定荷重と積載荷重との和に水平震度を乗じて計算する。(一級構造:平成25No.8)
■問題2
地下部分の地震層せん断力は、「地下部分の固定荷重と積載荷重との和に、当該部分の地盤面からの深さに応じた水平震度kを乗じて求めた地震力」と「地上部分から伝わる地震層せん断力」との和である。(一級構造:平成27No.7)

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■解答
 問題1、2ともに正。
 問題1の主語は「地震力」、問題2の主語は「地震層せん断力」であることがポイントです。
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ポイント:地下部分の地震力と地震層せん断力
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① 地下部分の地震力
  =(固定荷重+積載荷重)×水平震度
② 地下部分の地震層せん断力
  =(固定荷重+積載荷重)×水平震度
   +「地上部分から伝わる地震層せん断力」
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前回№326で説明したように、
水平震度とは、ある層の地震力が、その層の重量の何倍かを表します。
重量は(固定荷重+積載荷重)です。それが上記の①です。
②は、地震層せん断力です。
せん断力は応力の一つですから、求めようとする点で切断して片側に働く力を求めます。すなわち、「地下部分に直接働く地震力①」と「地上部分から伝わる地震層せん断力」の和になります。それが上記の②です。

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地下部分の水平震度の大きさは、次のとおりです。
・地盤面では0.1(Zは地域地震係数)。
・地盤面からの深さが20までは、深くなるにつれて小さくなる。
地盤面からの深さが20を超えると、0.05で一定となる。
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※前回№
326で説明しました、
・屋上から突出する塔屋の水平震度が1.0Z、
・地表に設置された広告塔などの工作物の水平震度が0.5
と比べると、地下部分の地震力は小さいことがわかります。

井澤ですいざわ

■問題1
教室に連絡する廊下や階段の床の積載荷重は、実況に応じて計算しない場合、教室の床の積載荷重と同じ値を用いることができる。(一級構造:平成27No.8)
■問題2
店舗の売場に連絡する廊下の床の構造計算に用いる積載荷重は、実況に応じて計算しない場合、店舗の売場の床の積載荷重を用いることができる。(一級構造:平成20No.8)
■問題3
百貨店の屋上広場の単位面積当たりの積載荷重は、実況に応じて計算しない場合、百貨店の売場の単位面積当たりの積載荷重と同じ数値とすることができる。(一級構造:平成24No.7)

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■解答
 問題1、2ともに誤。 実況に応じて計算にしない場合、教室、売場に連絡する廊下や階段の積載荷重は、「固定席でない客席」の値とする。
 問題3 正。
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積載荷重の中で間違えやすいのが、次の「廊下、玄関又は階段」と「屋上広場又はバルコニー」の扱いです。

ポイント:積載荷重(実況に応じて計算にしない場合)

室の種類

積載荷重の値

① 教室、売場、客席に連絡する「廊下、玄関又は階段」

劇場等の「固定席でない客席」の値とする。

② 学校、百貨店の「屋上広場又はバルコニー」

百貨店等の「売場」の値とする。


(①について)
教室の授業終了後、バーゲンの売場、客席の講演終了後、これらに連絡する廊下、階段をイメージしてください。一時的に人が集中しますね。
したがって、これらに連絡する廊下、階段の積載荷重は、積載荷重が大きい劇場等の、しかも「固定席でない客席」の値とします。
「固定席」よりも「固定席でない客席」のほうが、集中度合が高く、積載荷重が大きいこともしっかり覚えておきましょう。

(②について)
屋上広場と言えば百貨店です。5階以上の百貨店には屋上広場の設置が義務付けられているぐらいですから。(建築基準法施行令126条2項)

井澤ですいざわ

■問題1
単位床面積当たりの積載荷重の大小関係は、実況に応じて計算しない場合、「床の構造計算をする場合」>「大ばり、柱又は基礎の構造計算をする場合」>「地震力を計算する場合」である。(一級構造:平成18No.8)
■問題2
事務室の柱の垂直荷重による圧縮力を計算する場合において、ささえる床の数に応じて、積載荷重を低減することができる。(一級構造:平成19No.8)
■問題3
劇場の柱の垂直荷重による圧縮力を計算する場合において、ささえる床の数に応じて、積載荷重を低減することができる。(一級法規:平成23No.12改)

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■解答
 問題1、2 正。
 問題3 誤。劇場の場合、ささえる床の数による積載荷重の低減はない。
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積載荷重
は、人間、家具など、移動可能なものの重さによる荷重です。
積載荷重の特徴は、分布に偏りが生じることです。
そこで、分布の偏りを考慮して、次の3つの計算において、それぞれ異なる値が定められています。

(1)積載荷重と構造計算の種類

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① 床の構造計算用
床の構造計算をする場合は、積載荷重が最も集中した最大値でも床が抜けないようにするため、積載荷重の値は最大値になります。
② 大ばり・柱・基礎の構造計算用
上図で考えると左手前の柱は、床の左手前1/4の積載荷重を負担します。床の1/4全体が積載荷重の最大値になっていることは考えにくく、床の1/4で積載荷重が平均化されると、積載荷重の値は小さくなります。
③ 地震力の構造計算用
地震力は床全体の重量にかかります。床全体でみると、積載荷重はさらに平均化されるので、積載荷重の値はさらに小さくなります。


(2)柱がささえる床の数による積載荷重の低減

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① 一般の場合(劇場、映画館等以外)
考え方は(1)と同じです。
ささえる床の数が多くなると、その分、積載荷重が平均化され、偏りが小さくなるので、積載荷重を低減することができます。
(注意)
ささえる床の数が多くなると低減率は小さくなりますが、決して積載荷重が小さくなるということではありません。上図下段のとおり、1階柱の積載荷重は、2階柱の積載荷重よりも大きくなります。
② 劇場、映画館等の場合
劇場、映画館等では、「ささえる床の数による積載荷重の低減」はありません。
劇場、映画館等では全階満員で、平均化しても積載荷重の値が小さくならない場合があるからです。

井澤ですいざわ

今日から構造です。
「荷重・外力の組合せ」からです。
結構間違えやすい部分です。
最重要ポイントは「多雪区域で、積雪荷重を長期荷重、風圧力、地震力にどのように組み合わせるか」です。

■問題1
保有水平耐力計算に用いる荷重及び外力の組合せにおいては、地震力と風圧力が同時に作用することは想定していない。(一級構造:平成18No.8)
■問題2
多雪区域ではない地域において、暴風時又は地震時の荷重を、積雪荷重と組み合わせる必要はない。(一級構造:平成21No.7)
■問題3
多雪区域内において、長期積雪荷重は、短期積雪荷重の0.7倍の数値とする。(一級構造:平成21No.7)
■問題4
多雪区域においては、暴風時又は地震時の荷重を、積雪荷重と組み合わせる必要がある。(一級構造:平成26No.8)
■問題5
多雪区域において、暴風時に考慮すべき積雪荷重は、短期の積雪荷重を低減して用いることができる。(一級構造:平成27No.8)
■問題6
多雪区域においては、暴風時においても積雪荷重がある場合と積雪荷重がない場合とを考慮する。(一級構造:平成19No.8)
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■解答
 問題1 正。保有水平耐力計算でも許容応力度計算でも、地震力と風圧力が同時に作用することは想定していない。
 問題2 正。
 問題3 正。長期積雪荷重=0.7S。
 問題4 正。(+0.35S)している。
 問題5 正。短期の積雪荷重Sを0.35倍に低減して用いる。
 問題6 正。
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荷重・外力の組合せ

力の種類

状態

一般区域

多雪区域

長期に
生ずる力

常時

(G+P)

(G+P)

積雪時

 ---

(G+P)0.7

短期に
生ずる力

積雪時

(G+P)+S

(G+P)+S

暴風時

(G+P)+W

(G+P)+W

(G+P)+W0.35

地震時

(G+P)+K

(G+P)+K0.35

G+P:固定荷重+積載荷重
S:積雪荷重
W:風圧力
K:地震力

一見複雑そうですが、
一般区域(=多雪区域ではない区域)は単純ですね。また、多雪区域と一般区域との違いは、赤で示した積雪荷重Sの扱いだけです。

――――ポイント:荷重・外力の組合せ――――
① 一般区域、多雪区域とも、風圧力Wと地震力Kを組み合わせない。(暴風と地震は同時に来ないと想定している)
② 一般区域では、風圧力W、地震力Kだけでなく積雪荷重Sも組み合わせない。
③ 多雪区域では、積雪荷重Sを長期荷重、風圧力W、地震力Kにどのように組み合わせるかがポイント。
 →長期荷重には0.7(短期積雪荷重の0.7倍)を加える。
 →短期の風圧力W、地震力Kには0.35を加える。
④ 多雪区域で風圧力Wを計算する場合、0.35Sを加える場合と加えない場合の両方を検討する。(風により吹上力が生じるときは0.35Sを加えない場合のほうが危険だから。)
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井澤ですいざわ

■問題1
型枠支保工の構造計算において、固定荷重として、鉄筋を含んだ普通コンクリートの荷重(24k/㎥×部材厚さ())に在来工法の型枠の重量0.4k/㎡を加えた値を用いた。(一級施工:平成27No.9)
問題
型枠支保工の構造計算において、コンクリートの打込みをポンプ工法により行うので、打込み時の積載荷重を1.5k/㎡とした。(一級施工:平成24No.9)

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■解答
 問題1、2ともに正。
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前回は型枠支保工の水平荷重を学習しました。
今回は型枠支保工の鉛直荷重です。
型枠支保工の鉛直荷重は、建築物の鉛直荷重と同じく、固定荷重と積載荷重に分けて考えます。

―――ポイント:型枠支保工の鉛直荷重――――

型枠支保工の鉛直荷重は、固定荷重と積載荷重の和とする。 

種類

説明

具体的な値

固定荷重

打込み時の鉄筋・コンクリート・型枠の重量による荷重

固定荷重は、鉄筋を含んだ普通コンクリートの荷重(24 k/×部材厚さm)に、在来工法の型枠の重量0.4 k/を加えた値とする。

積載荷重

打込み時の打設機具、足場、作業員、資材の積上げなどの重量による作業荷重及び打込みに伴う衝撃荷重

積載荷重は、ポンプ工法による打込みの場合は、1.5k/とする。

 

 

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