TAC建築士講師室ブログ

TAC建築士講座の講師・スタッフのブログです。

累加強度式

井澤ですいざわ

■問題1
鉄骨鉄筋コンクリート構造において、柱の軸方向力は、鉄筋コンクリート部分の許容軸方向力以下であれば、その全てを鉄筋コンクリート部分が負担するとしてよい。(一級構造:平成26No.19
■問題2
鉄骨鉄筋コンクリート構造の柱梁接合部において、柱の鉄骨部分の曲げ耐力の和を、梁の鉄骨部分の曲げ耐力の和の65%としたので、両部材間の鉄骨部分の応力伝達に対する安全性の検討を省略した。(一級構造:平成19No.14

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■解答
問題1 正。柱の軸力と曲げモーメントについて「S部分」と「RC部分」の分担は自由。
問題2 正。柱梁接合部の「柱の鉄骨部分の曲げ耐力」と「梁の鉄骨部分の曲げ耐力」との比が0.42.5であれば、「柱」と「梁」の鉄骨部分の曲げ耐力のバランスが良く、両部材間の鉄骨部分の応力伝達に対する安全性の検討を省略することができる。設問の65%(0.65)はこの範囲内にある。
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問題1は「分担自由」?
問題2は「バランス良く」?
矛盾している?
と勘違いしないでくださいね。

■問題1は、柱の軸方向力について
「S部分」「RC部分」の分担は自由という意味です。S部分とRC部分を足し合わせて耐えれば良い、つまり、累加強度式で算定できるという意味です。詳しくはNo.372(SRC造_累加強度式)を参照してください。
http://kentikushi-blog.tac-school.co.jp/archives/48435857.html

一方、問題2は、S部分について、「柱」「梁」の曲げ耐力をバランス良くすれば応力伝達がスムーズになる、という意味です。それでは問題2のポイントです。

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ポイント
「柱」と「梁」のS部分の曲げ耐力のバランス

柱梁接合部の「柱の鉄骨部分の曲げ耐力」と「梁の鉄骨部分の曲げ耐力」との比が0.4~2.5であれば、両部材間の鉄骨部分の応力伝達に対する安全性の検討を省略できる。
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式で表すと、次のとおりです。

SRC_S_balance1

0.4
は4/10、2.5は10/4ですから次のように書けます。

SRC_S_balance2

この式の意味は、「柱」と「梁」の鉄骨部分の曲げ耐力のどちらが大きくても構わないが、大小の差が
10:4より離れていない、ということです。

0.42.5の範囲内であれば、「柱」の鉄骨量と「梁」の鉄骨量がほぼ同程度のため、「柱」の鉄骨と「梁」の鉄骨の応力伝達がスムーズになり、応力伝達に対する安全性の検討を省略できます。

0.4~2.5の範囲内でなければ、「柱」と「梁」の鉄骨部分の曲げ耐力のバランスが悪く、「柱」の鉄骨と「梁」の鉄骨の応力伝達がスムーズでなくなるため、特別の検討が必要となります。

井澤ですいざわ

No.374からかなり間が空いてしまいましたので、No.372からNo.374で学習した、SRC造の累加強度式のポイントを再確認しましょう。
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① 「曲げモーメント・軸力」については、許容耐力であれ、終局耐力であれ、
   累加強度式で算定できる。
② 「終局耐力」については、曲げモーメントであれ、軸力であれ、せん断力であれ、
   累加強度式で算定できる。
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今回はこれ以外のところ、つまり「せん断力」の「許容耐力」の部分、一言で言えば「許容せん断力」を扱います。


問題1
鉄骨鉄筋コンクリート構造の柱の短期荷重時のせん断力に対する検討に当たっては、鉄骨部分の許容せん断耐力と鉄筋コンクリート部分の許容せん断耐力との和が、設計用せん断力を下回らないものとする。(一級構造:平成27年No.23)
問題2
鉄骨鉄筋コンクリート構造の柱の長期許容せん断力は、鉄骨部分の長期許容せん断力を無視し、鉄筋コンクリート部分のみの長期許容せん断力とした。(一級構造:平成14年No.13)

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解答
問題1 誤。許容せん断力については、累加強度式で算定できない。柱の短期許容せん断力は、SとRCそれぞれについて「生じている力≦許容耐力」を確かめる。
問題2 正。接合部と柱の長期許容せん断力は、ひび割れを許さず、鉄筋コンクリート部分のみの長期許容せん断力とする。
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はじめに今回のテーマである「許容せん断力」について、次表中の位置をしっかり確認してください。
 
SRC_superposed strength-2

表から分かるとおり、応力の3種類である「曲げモーメント・軸力・せん断力」のうち、「せん断力」だけは、部位(接合部か・柱か・梁か)によって、また、許容耐力が長期か短期か(長期許容せん断力か・短期許容せん断力か)によって、計算方法が複雑に変わります。

まずは、この「許容せん断力」について、次のように理解してください。
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「許容せん断力については、累加強度式で算定できない。」
(とりあえず接合部の短期の部分だけは無視してください。)
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「累加強度式で算定できない」ということは、Sの耐力とRCの耐力を合計できないということです。ではどうしたら良いか?基本的な考え方は次のとおりです。
・SはSだけで生じている力を求め、Sの許容耐力以下であることを確かめる。
・RCはRCだけで生じている力を求め、RCの許容耐力以下であることを確かめる。
これが表中で「SとRCそれぞれで耐える」と書いた考え方です。
表にあるとおり、柱の短期許容せん断力と、梁の長期・短期許容せん断力がこれに該当します。

なぜ許容せん断力については、累加強度式で算定できないのか?
なぜ許容せん断力については、累加強度式で算定できないかというと、「曲げ降伏先行」の考え方を前提としているからです。曲げ降伏を先行させる理由は、曲げは靱性破壊、せん断は脆性破壊だからですね。
そして、「曲げ降伏先行」の場合、曲げ降伏によって曲げ変形が大きくなると、SとRCがズレて、SとRCの付着がなくなるからです。SはSだけで耐え、RCはRCだけで耐えなければならなくなり、SとRCで協力して分担するという累加強度式の考え方ができなくなります。

接合部と柱の長期許容せん断力は「ひび割れを生じない」
表にあるとおり、接合部と柱の長期許容せん断力がこれに該当します。
「ひび割れを生じない」という条件は厳しい条件です。
なぜならSを無視し、RCの鉄筋も無視して、コンクリートが耐えられるという条件だからです。
この厳しい条件に適合させなければならないのは、もちろん特に大事な部位です。
接合部、柱、梁の3つの中で、より大事な部位を2つを選べと言われれば、接合部と柱になりますよね。接合部と柱の崩壊は、建築物の崩壊に直結しますからね。柱の全塑性モーメントを梁の全塑性モーメントよりも大きくするのも同じ理由です。

許容せん断力の中で、接合部の短期許容せん断力だけは、累加強度式で算定できる。
この理由は、柱梁接合部の部分は、柱または梁に比べてしっかりと拘束されているので、SとRCがズレにくいからです。

以上、累加強度式について、No.372から4回にわたり説明してきました。
ポイントを整理しますので、前述の表と一緒に理解してください。

――――ポイント:SRC造の累加強度式――――
① 「曲げモーメント・軸力」は累加強度式で算定できる
② 「終局耐力」は累加強度式で算定できる
③ 「許容せん断力」は、原則として累加強度式で算定できない
  ③をより細かく見ると、
  1.柱の短期許容せん断力と、梁の長期・短期許容せん断力は、
    SとRCそれぞれで耐える。
  2.接合部と柱の長期許容せん断力は、ひび割れを許さず、
    コンクリート部分のみの長期許容せん断力とする。
  3.許容せん断力の中で、接合部の短期許容せん断力だけは、
    累加強度式で算定できる。
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井澤ですいざわ

■問題1
大梁の終局せん断強度は、鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれについて計算した終局せん断強度の和とした。(一級構造:平成24No.19
■問題2
部材の終局せん断耐力は、鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分において、それぞれの「曲げで決まる耐力」と「せん断で決まる耐力」のいずれか小さいほうの耐力を求め、それらの耐力の和とすることができる。(一級構造:平成22No.19

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■解答
問題1、2ともに正。問題1の「終局せん断強度」と問題2の「終局せん断耐力」は同じものです。
問題1は、前回のNo.373でも扱いました。「終局耐力」については、「曲げモーメント」であれ「軸力」であれ「せん断力」であれ、累加強度式で算定できますので、問題1は正です。
問題2は、問題1の内容をさらに掘り下げたものです。
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■問題1の内容は次のとおりです。
(終局せん断耐力)=(Sの終局せん断耐力)+(RCの終局せん断耐力)

■問題2は、問題1に加えて、右辺の(Sの終局せん断耐力)をどうやって求めるか?
同じく右辺の(RCの終局せん断耐力)をどうやって求めるか?
という論点が加わっているのです。

(Sの終局せん断耐力)であれ、(RCの終局せん断耐力)であれ、
「曲げで決まる耐力」と「せん断で決まる耐力」のいずれか小さいほうの耐力とします。
図示すると次のとおりです。

SRC sendan

せん断力には、「純粋なせん断力」だけでなく、「曲げモーメントによって決まってくるせん断力」があります。
後者は、ズバリ次の式から算出されるせん断力です。力学で見たことがあるはずです。
Q&M
「純粋なせん断力」と「曲げモーメントによって決まってくるせん断力」のいずれか小さいほうまでしか耐えられませんので、
(Sの終局せん断耐力)、(RCの終局せん断耐力)ともに、それぞれの「曲げで決まる耐力」と「せん断で決まる耐力」のいずれか小さいほうの耐力を求めます。
そして最後に次の累加強度式で足し合わせるのです。
(終局せん断耐力)=(Sの終局せん断耐力)+(RCの終局せん断耐力)


井澤ですいざわ

今回のテーマは、SRC造の累加強度式について、
「終局耐力は累加強度式で算定できるか?」です。

■問題1
柱の曲げ強度は、鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれの終局耐力の累加が最大となる一般化累加強度式により算定することができる。(一級構造:平成22No.19
■問題2
大梁の終局せん断強度は、鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれについて計算した終局せん断強度の和とした。(一級構造:平成24No.19

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■解答
 問題1、2ともに正。
 問題1の「曲げ」であれ、問題2の「せん断力」であれ、「終局耐力(終局強度)」であれば、累加強度式で算定でき、S部分の終局耐力とRC部分の終局耐力との「和」とすることができます。
 なお、問題1は、前回のNo.372でも扱いました。問題1は、「曲げ」だけ見ても「終局」だけ見ても、累加強度式で算定できる、と判断できます。
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はじめに、「強度」と「耐力」は同じ意味です。
したがって、「終局強度」と「終局耐力」は同じ意味です。

次に「終局耐力」とは何か? これは「許容耐力」と比較して覚えておきましょう。

――――ポイント:許容耐力と終局耐力――――
許容耐力
・安全に余裕を見て許容できる耐力(強度)。
・この時の応力度(力/断面積)を許容応力度という。
・許容耐力=許容応力度×断面積
・許容応力度に短期と長期があるように、許容耐力にも
終局耐力
・最大の耐力(強度)。限界の耐力。
・この時の応力度(力/断面積)を材料強度という。
・終局耐力=材料強度×断面積
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それでは今日のテーマのポイントです。

――――――ポイント:累加強度式――――――
・終局耐力は、累加強度式で算定できる
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終局耐力には、軸方向力、せん断力、曲げモーメントがあり、それぞれ
終局軸方向耐力(終局圧縮耐力・終局引張耐力)、終局せん断耐力、終局曲げモーメントといいます。
いずれも累加強度式で算定できます。
つまり、S部分の終局耐力とRC部分の終局耐力の「和」とすることができます。

それではここで、累加強度式のポイントを整理した表を見てください。
とても大事な表です。しっかり覚えてください。

SRC_superposed strength

前回と今回で学習した内容は表中の次の部分です。

① 表の最上行の「曲げモーメント・軸力」については、許容耐力であれ、終局耐力であれ、累加強度式で算定できる。
② 表の最右列の「終局耐力」については、「曲げモーメント」であれ「軸力」であれ「せん断力」であれ、累加強度式で算定できる。

次回は、終局せん断耐力について、もう少し突っ込んだ内容を扱います。

井澤ですいざわ

SRC造の最大のポイントは「累加強度式」です。
これからしばらく、この「累加強度式」を扱います。

≪今回のテーマ≫
軸力と曲げモーメントは累加強度式で算定できるか?

■問題1
柱の曲げ強度は、鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれの終局耐力の累加が最大となる一般化累加強度式により算定することができる。(一級構造:平成22No.19
■問題2
柱の軸方向力は、鉄筋コンクリート部分の許容軸方向力以下であれば、その全てを鉄筋コンクリート部分が負担するとしてよい。(一級構造:平成26No.19

――――
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■解答
 問題1 正。曲げ強度(終局曲げ耐力)は累加強度式で算定できる。
 問題2 正。軸力は累加強度式で算定できる。つまり、S部分とRC部分を足し合わせて耐えれば良い。したがって、S部分とRC部分で半分ずつ負担しても良いし、全てをS部分だけで負担しても良いし、はたまた全てをRC部分だけで負担しても良い。
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■累加強度式とは何か
はじめに「累加強度式」とは何かを確認しておきましょう。
累加とは、足し合わせること、つまり「和」です。
何の「和」かというと、SRC造において、S部分の耐力RC部分の耐力との「和」です。
例えば梁に100kN・mの曲げモーメントが作用する場合、S部分を60 kN・mに耐える断面寸法とし、RC部分を40 kN・mに耐える断面寸法とすれば、「和」が100kN・mとなるので耐えられる、とする考え方が「累加強度式」です。

■一般化累加強度式と単純累加強度式
累加強度式には「一般化累加強度式」と「単純累加強度式」とがありますが、この違いを理解する必要はありません。「一般化」だろうが「単純」であろうが、「累加強度式により算定できるかどうか」で正誤を判断できます。
つまり問題1の「一般化累加強度式により算定することができる」という記述は「正」ですが、この問題が「単純累加強度式により算定することができる」という問題だったとしても「正」で、正誤は変わりません。

(一言で説明すると)
一応、一言で説明すると、「一般化累加強度式」は「軸力と曲げモーメントの関係をベクトルで表したときの、S部分とRC部分のベクトルの足し算」、「単純累加強度式」は「軸力と曲げモーメントの最大値の単純な足し算」です。


――――ポイント:累加強度式――――
・曲げモーメントと軸力は、累加強度式で算定できる
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次回のテーマは「終局耐力は累加強度式で算定できるか?」です。

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