TAC建築士講師室ブログ

TAC建築士講座の講師・スタッフのブログです。

許容耐力


井澤ですいざわ

今回のテーマは、SRC造の累加強度式について、
「終局耐力は累加強度式で算定できるか?」です。

■問題1
柱の曲げ強度は、鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれの終局耐力の累加が最大となる一般化累加強度式により算定することができる。(一級構造:平成22No.19
■問題2
大梁の終局せん断強度は、鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれについて計算した終局せん断強度の和とした。(一級構造:平成24No.19

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■解答
 問題1、2ともに正。
 問題1の「曲げ」であれ、問題2の「せん断力」であれ、「終局耐力(終局強度)」であれば、累加強度式で算定でき、S部分の終局耐力とRC部分の終局耐力との「和」とすることができます。
 なお、問題1は、前回のNo.372でも扱いました。問題1は、「曲げ」だけ見ても「終局」だけ見ても、累加強度式で算定できる、と判断できます。
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はじめに、「強度」と「耐力」は同じ意味です。
したがって、「終局強度」と「終局耐力」は同じ意味です。

次に「終局耐力」とは何か? これは「許容耐力」と比較して覚えておきましょう。

――――ポイント:許容耐力と終局耐力――――
許容耐力
・安全に余裕を見て許容できる耐力(強度)。
・この時の応力度(力/断面積)を許容応力度という。
・許容耐力=許容応力度×断面積
・許容応力度に短期と長期があるように、許容耐力にも
終局耐力
・最大の耐力(強度)。限界の耐力。
・この時の応力度(力/断面積)を材料強度という。
・終局耐力=材料強度×断面積
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それでは今日のテーマのポイントです。

――――――ポイント:累加強度式――――――
・終局耐力は、累加強度式で算定できる
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終局耐力には、軸方向力、せん断力、曲げモーメントがあり、それぞれ
終局軸方向耐力(終局圧縮耐力・終局引張耐力)、終局せん断耐力、終局曲げモーメントといいます。
いずれも累加強度式で算定できます。
つまり、S部分の終局耐力とRC部分の終局耐力の「和」とすることができます。

それではここで、累加強度式のポイントを整理した表を見てください。
とても大事な表です。しっかり覚えてください。

SRC_superposed strength

前回と今回で学習した内容は表中の次の部分です。

① 表の最上行の「曲げモーメント・軸力」については、許容耐力であれ、終局耐力であれ、累加強度式で算定できる。
② 表の最右列の「終局耐力」については、「曲げモーメント」であれ「軸力」であれ「せん断力」であれ、累加強度式で算定できる。

次回は、終局せん断耐力について、もう少し突っ込んだ内容を扱います。

井澤ですいざわ

■問題1
鉄骨構造において、一つの継手に高力ボルト摩擦接合と溶接接合とを併用する場合、高力ボルトの締め付けを溶接に先立って行うことにより、両方の許容耐力を加算した。(一級構造:平成24No.16
■問題2
鉄骨構造において、一つの継手の中に高力ボルト摩擦接合と溶接接合とを併用する場合、先に溶接を行うと溶接熱によって板が曲がり、高力ボルトを締め付けても接合面が密着しないことがあるため、両方の耐力を加算することはできない。(一級構造:平成27No.18

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■解答
 問題1、2ともに正。
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さっそくポイントです。
問題2は、それ自体がとても分かりやすい解説になっていますね。

ポイント:溶接接合と高力ボルト摩擦接合の併用
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■先に高力ボルトを締め付けた場合
 →両方の耐力を加算できる
■先に溶接を行う場合
 →両方の耐力を加算できない
 →先に溶接を行うと溶接熱によって板が曲がり、高力ボルトを締め付けても接合面が密着しないため。
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と、ここまでの話は、どんなテキストにも載っているかと思います。
似たような話として、木造の釘接合とボルト接合の併用まで一緒に整理しておくのが比較暗記法の真骨頂です。
この場合は、どっちの接合が先か、ではありません。

■問題3
木造軸組工法において、1か所の接合部に釘とボルトを併用したときの接合部の耐力は、それぞれの許容耐力を加算することができる。(一級構造:平成22年No.

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■解答
 問題3 誤。
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ポイント:木造における釘接合とボルト接合の併用
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■木造における釘接合とボルト接合の併用
 →両方の耐力を加算できない
 →釘は変形はじめの耐力が大きいが、ボルトは変形が進んだ後半の耐力が大きく、両者が最大耐力を発揮するタイミングが異なるため。
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