TAC建築士講師室ブログ

TAC建築士講座の講師・スタッフのブログです。

降伏点

井澤ですいざわ

■問題1
コンクリート供試体の圧縮強度は、形状が相似の場合、一般に、供試体寸法が小さいほど大きくなる。
(一級構造:平成19No.24
■問題2
同じ鋼塊から圧延された鋼材の降伏点は、一般に、「板厚の薄いもの」より「板厚の厚いもの」のほうが低くなる。
(一級構造:平成22No.29

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■解答
 問題1、2ともに正。
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コンクリート供試体の寸法は「直径
100㎜、高さ200㎜」が標準ですが、「直径150㎜、高さ300㎜」や「直径200㎜、高さ400㎜」が使われることもあります。このとき、寸法と圧縮強度の関係を知っておかないと試験結果を正しく評価できません。

コンクリート供試体と鋼材について、
寸法と強度の関係を比較・整理すると、次のとおりです。

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ポイント:コンクリート供試体の寸法と圧縮強度
■圧縮強度
供試体寸法が大きいほど、欠陥の確率が高まるため、圧縮強度は小さくなる。(①)

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ポイント:鋼材の板厚と降伏点・引張強さ
■降伏点
板厚が40mmを超えると(=板厚が厚くなると)、熱処理時の冷却にムラができやすいため、降伏点が低下する。(②)
■引張強さ
引張強さは、板厚にかかわらず同じ。(③)

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上記③は例外として、①と②の内容を一言で言えば、寸法が大きいほど強度は小さくなる、ということです。
普通は「?」と思いますよね。だから試験で狙われるのです。そして多くの受験生が間違えるのです。
 

間違えてはいけないのは、
「寸法が大きいほど小さな力[N]で壊れる」ということではありません。
もちろん、寸法が大きいほど大きな力[N]で壊れます。
ただし、断面積1㎟当たりの力、すなわち、強度[N/㎟]で見ると、寸法が大きいほど強度[N/㎟]は小さくなるのです。
その理由は、上記のとおり、欠陥の確率が高まるためであり、また、熱処理時の冷却にムラができやすいためです。

No.355
(鋼材の板厚と降伏点・引張強さ)も復習しておいてください。
http://kentikushi-blog.tac-school.co.jp/archives/48182360.html





井澤ですいざわ

■問題1
鉄骨造の建築物において、大スパンの梁部材に降伏点の高い鋼材を用いることは、鉛直荷重による梁の弾性たわみを小さくする効果がある。(一級構造:平成26No.30
■問題2
梁のたわみを小さくするために、SN400Bから同じ断面寸法のSN490Bに変更した。(一級構造:平成17No.17
■問題3
曲げ剛性に余裕のあるラーメン構造の梁において、梁せいを小さくするために、SN400B材の代わりにSN490B材を用いた。(一級構造:平成28No.17

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■解答
 問題1、2 誤
 鋼材は強度を大きくしてもヤング係数は変わらないので、たわみは同じ。
 問題3 正。
 強度を大きくすれば断面寸法(梁せい)を小さくすることができる。
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問題3は、平成
28年の出題です。
それ以前に出題されていた問題1と2だけを覚えていると、ひっかけ問題と感じるかもしれませんが、実は問題3のほうが直感と一致する内容です。

まずはポイントから。

―――ポイント:強度とたわみ・断面寸法―――
強度を大きくすると
たわみ小さくできない
断面寸法(梁せい)小さくできる
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少し詳しく見ていきましょう。
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■たわみについて
たわみは、例えば片持ち梁の先端に集中荷重が働く場合は、次の公式で求められます。
deflection
したがって、
たわみを小さくするためには、分母のE(ヤング係数=硬さ)を大きくするか、I(断面二次モーメント)を大きくする必要があります。

①ヤング係数E
 鋼材は強度を大きくしてもヤング係数Eは変わらないので、たわみは同じです。

②断面二次モーメントI
 断面二次モーメントIは、次の公式で求められます。断面二次モーメントIを大きくするためには断面寸法を大きくする必要があります。強度を大きくしても断面二次モーメントは変わりません。
moment of second order 
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■断面寸法(梁せい)について
直感と異なるのは前述の「たわみ」のほうであって、「断面寸法(梁せい)」のほうは直感で十分理解できるはずです。
一言で言えば、強度を大きくすれば、断面寸法(梁せい)が小さくても耐えられるということです。
少し専門的に言えば、許容応力度設計では「応力度≦許容応力度」を満たすことが求められます。
強度が大きければ、右辺の許容応力度が大きくなります。
左辺の応力度は一言で言えば、「力/断面積」です。(曲げ応力度は「曲げモーメント/断面係数」(M/Z)です。
したがって、右辺の許容応力度が大きくなれば、左辺の分母の「断面積」は小さくできます。つまり、断面寸法(梁せい)を小さくできるのです。

井澤ですいざわ

■問題1
鋼材の引張強さは、一般に、250300℃付近で最大となり、これを超えると温度の上昇とともに低下する。(一級構造:平成8年No.25
■問題2
鋼材の温度上昇に伴って、降伏点が常温時の2/3まで低下する温度は、一般構造用圧延鋼材(SS材)では約350℃であり、耐火鋼(FR鋼)では600℃以上である。(一級構造:平成7年No.25
■問題3
建築構造用耐火鋼(FR鋼)は、高温時の耐火性に優れており、600℃における降伏点が常温規格値の2/3以上あることを保証した鋼材である。(一級構造:平成21No.29


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■解答
 問題1、2、3ともに正
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さっそくポイントを確認しましょう。


ポイント:鋼材の温度と引張強さ・降伏点
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■引張強さ
 鋼材の引張強さは、250300℃付近で最大となり、
 これを超えると温度の上昇とともに急激に低下する。

■一般構造用圧延鋼材(SS材)の降伏点
 約350℃降伏点が常温時の2/3まで低下

■耐火鋼(FR鋼Fire Resistant Steelの降伏点

 約600降伏点が常温時の2/3まで低下
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 temperature

井澤ですいざわ

■問題1
SN490材の許容引張応力度は、板厚による影響を受けないので、板厚25㎜と50㎜とでは同じ値である。(一級構造:平成21No.15
■問題2
同じ鋼塊から圧延された鋼材の降伏点は、一般に、「板厚の薄いもの」より「板厚の厚いもの」のほうが高くなる。(一級構造:平成22No.29
■問題3
SN490Bについては、降伏点又は耐力は板厚が40mmを超えると低下するが、引張強さは板厚が100mm以下まで同じである。(一級構造:平成18No.25


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■解答
 問題1、2ともに誤。
 板厚が40mmを超えると、製造過程で冷却にむらができやすく、降伏点が低下する。鋼材は降伏点を基準強度としており、それに基づく許容応力度も小さくなる。
 問題3 正。
 なお、設問の中で「板厚が
100mm以下まで」と書いてあるのは、JIS G3136(建築構造用圧延鋼材)に板厚100㎜以下までしか規定されていないからです。
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さっそくポイントを確認しましょう。

ポイント 鋼材の板厚と降伏点・引張強さ――
■降伏点
 板厚が40mmを超えると(=板厚が厚くなると)、熱処理時の冷却にムラができやすく、降伏点が低下する。
■引張強さ
 引張強さは、板厚にかかわらず同じ。
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井澤ですいざわ

TACでは今週末から一級建築士設計製図コースが開講になります。
教室も教材作成も設計製図一色となっていますが、「井澤式 建築士試験 比較暗記法」では、来年の学科試験合格のために、引き続いて「構造」のポイントを扱っていきます。

今年、学科試験が残念な結果だった方には、もう少しの間、試験のことは忘れてゆっくりされるのも良いことだと思いますが、このブログが、せっかく身に付けた知識を忘れないようにするきっかけになればと思っています。

ありがたいことに「合格した後も見ています」と言ってくれる方もいらっしゃいます。

それでは問題です。

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■問題1
鉄筋コンクリート用棒鋼SD345の「降伏点又は0.2%オフセット耐力」は、345440/㎟である。(一級構造:平成15No.24
■問題2
建築構造用ステンレス鋼材SUS 304 Aは、降伏点が明確でないので、その基準強度については、0.1%オフセット耐力を採用している。(一級構造:平成15No.24


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■解答
 問題1、2ともに正。
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鉄筋SD
345の数値は、原則として、降伏点の下限値です。これが基準強度になります。
この辺りの詳細についてはNo.340(SN400B・SD345の数値の意味)を参照してください。
http://kentikushi-blog.tac-school.co.jp/archives/47848865.html

それでは、
降伏点が明確に現れない場合は、どのような値を基準強度とするか?
図のSUS304は降伏点が明確に現れておらず、応力度-ひずみ度曲線がなだらかな曲線になっています。
こういうときに使うのが「オフセット耐力」です。
オフセットとは、ここでは「ズレ」の意味で使われています。図の曲線の原点と点線がズレていますね。
 

offset

0.1%オフセット耐力」とは、永久ひずみ0.1%となるときの応力度をいいます。
図の場合、「0.1%オフセット耐力」は約270/㎟です。この力をかけると、力を取り除いても0.1%の永久ひずみが残ります。
この値の下限値(235/㎟)がSUS304の基準強度になります。

同様に「
0.2%オフセット耐力」とは、永久ひずみが0.2%となるときの応力度をいいます。

試験対策上、次の内容を比較整理して覚えておきましょう。

―――――ポイント:オフセット耐力―――――
■ステンレスの基準強度
 0.1オフセット耐力
■鉄筋の基準強度
 降伏点 又は 0.2オフセット耐力
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