TAC建築士講師室ブログ

TAC建築士講座の講師・スタッフのブログです。

SUS304

井澤ですいざわ

TACでは今週末から一級建築士設計製図コースが開講になります。
教室も教材作成も設計製図一色となっていますが、「井澤式 建築士試験 比較暗記法」では、来年の学科試験合格のために、引き続いて「構造」のポイントを扱っていきます。

今年、学科試験が残念な結果だった方には、もう少しの間、試験のことは忘れてゆっくりされるのも良いことだと思いますが、このブログが、せっかく身に付けた知識を忘れないようにするきっかけになればと思っています。

ありがたいことに「合格した後も見ています」と言ってくれる方もいらっしゃいます。

それでは問題です。

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■問題1
鉄筋コンクリート用棒鋼SD345の「降伏点又は0.2%オフセット耐力」は、345440/㎟である。(一級構造:平成15No.24
■問題2
建築構造用ステンレス鋼材SUS 304 Aは、降伏点が明確でないので、その基準強度については、0.1%オフセット耐力を採用している。(一級構造:平成15No.24


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■解答
 問題1、2ともに正。
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鉄筋SD
345の数値は、原則として、降伏点の下限値です。これが基準強度になります。
この辺りの詳細についてはNo.340(SN400B・SD345の数値の意味)を参照してください。
http://kentikushi-blog.tac-school.co.jp/archives/47848865.html

それでは、
降伏点が明確に現れない場合は、どのような値を基準強度とするか?
図のSUS304は降伏点が明確に現れておらず、応力度-ひずみ度曲線がなだらかな曲線になっています。
こういうときに使うのが「オフセット耐力」です。
オフセットとは、ここでは「ズレ」の意味で使われています。図の曲線の原点と点線がズレていますね。
 

offset

0.1%オフセット耐力」とは、永久ひずみ0.1%となるときの応力度をいいます。
図の場合、「0.1%オフセット耐力」は約270/㎟です。この力をかけると、力を取り除いても0.1%の永久ひずみが残ります。
この値の下限値(235/㎟)がSUS304の基準強度になります。

同様に「
0.2%オフセット耐力」とは、永久ひずみが0.2%となるときの応力度をいいます。

試験対策上、次の内容を比較整理して覚えておきましょう。

―――――ポイント:オフセット耐力―――――
■ステンレスの基準強度
 0.1オフセット耐力
■鉄筋の基準強度
 降伏点 又は 0.2オフセット耐力
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井澤ですいざわ

■問題1
建築構造用圧延鋼材SN400Bの引張強さの下限値は、400/㎟である。(一級構造:平成27No.29改)
■問題2
鉄筋コンクリート用棒鋼SD345の降伏点又は耐力の下限値は、345/㎟である。(一級構造:平成27No.29
■問題3
(一社)日本鉄鋼連盟製品規定「建築構造用冷間プレス成形角形鋼管」に適合するBCP235材の降伏点又は耐力の下限値は、235/㎟である。(一級構造:平成20No.25
■問題4
建築構造用ステンレス鋼材に定めるSUS304Aの基準強度は、板厚が40㎜以下のSN400Bと同じである。(一級構造:平成23No.29
■問題5
建築構造用ステンレス鋼材SUS304Aは、降伏点が明確ではないので、0.1%オフセット耐力を基に基準強度を定めている。(一級構造:平成25No.29

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■解答 すべて正。
 問題1、2は基本問題、問題3、4は発展問題と言えるでしょう。
 問題5は関連として一緒に覚えておきましょう。
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■基本

 

 

数値の意味

鋼材

SN400

400引張強さの下限値

鉄筋

SD345

345降伏点の下限値

・鋼材のように「引張強さ」で表すのが基本的な考え方と言えます。
・鉄筋は、鉄筋コンクリートの材料として使用されます。降伏点を超え伸びが大きくなるとコンクリートとズレが生じ、用をなさなくなるので「降伏点」で表します。

■発展

鋼材についての発展的な内容として、次の内容も覚えておきましょう。
鋼材は「引張強さ」で表すのが基本ですが、次のように例外があります。
・冷間成形角形鋼管(BCP:ボックスコラムプレス/BCR:ボックスコラムロール)は「降伏点」で表します。これは、角形に成形する際に一部をすでに塑性化させており、すでに降伏させているから、と考えてください。
・SUS304304は成分を表す記号であり、強度はまったく関係ありません。
そして次表の鋼材はすべて基準強度(=降伏点強度)が235/㎟で、まったく同じです。 

 

数値の意味

基準強度
(=降伏点強度)

SN400

400引張強さの下限値

235/
(板厚40mm以下※)

BCP235
BCR235

235降伏点の下限値

235/

SUS304

304は成分を表す記号

235/

※SN400について
板厚が40mmを超える場合の基準強度は215/㎟。板厚が厚くなると熱処理時の冷却にムラができやすく、降伏点が低下するため基準強度は小さくなる。

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